前回の内容から、中年期は、見た目以上にナイーブな時期であることがわかっていただけると
思います。
孔子は、「四十にして惑わず」と言ったそうですが、現在の中年は、迷うことばかりでしょう。
それが普通なのだと思います。今回からは、迷い事/悩みごとの多い中年の方へのキャリア支援
をするには、どのような視点が必要かを説明していきます。
1.キャリアの短期視点と中長期視点
キャリアを考えるには、短期視点だけでなく、中長期視点が必要です。人は、つい目の前の
ことばかりに捉われがちですが、中長期的なキャリアを考え、その後、短期的なキャリアを
考えていくことがよいと思われます。
中年期は人生の折り返し地点でもあり、職業人生の折り返し地点でもあります。ですから、
中年の場合の中長期視点として、定年というイベントは外せません。今は、定年延長後、
雇用延長として働く人が増えました。定年・雇用延長と言う大きな節目を、中年期のうちから、
しっかり考えておくことが大事です。
次に、定年・雇用延長に関する法律である「高年齢者雇用安定法」について簡単に説明します。
2.高年齢者雇用安定法
年金の支給年齢の引き上げに伴い、「高年齢者雇用安定法」が2006年に改訂されました。
要点は、次の通りです。
企業は、次のいずれか1つを選んで実施する義務があります。
(1) 定年の引き上げ
(2) 継続雇用制度の導入
(3) 定年制の廃止 |
多くの企業は、「(2) 継続雇用制度の導入」を実施しています。
「高年齢者雇用安定法」は、2013年にさらに改訂されました。要点は、次の通りです。
(1) 対象者を限定できる仕組みの廃止
(2) 対象者を雇用する企業の範囲の拡大(グループ企業にまで拡大) |
(1)の「対象者を限定できる仕組みの廃止」により、事業主は雇用延長を希望する方全員を、
雇用延長することになりました。勘違いされることが多いのですが、事業主には、雇用延長希望者
の希望通りの労働条件を用意する義務はありません。事業主には65歳までの安定した雇用を
確保する措置を義務付けているだけです。ですから、労働条件で折り合いがつかず、雇用継続に
至らないという場合もあることに注意する必要があります。
雇用延長を希望される方は、「雇用延長後も、今の仕事を続けたい」と希望される方が多いです。
これは、企業にとっても、再教育をせずに、雇用延長前の賃金より安く仕事をしてもらえるので、
好都合です。
しかし、今、中年になったばかりの方々が雇用延長になるころには、現在従事している仕事がなく
なっている可能性があります。時代の要求や技術革新にともない、労働者に求められる仕事は
変化していきます。中年の方は、今、仕事ができているからと言って安心せず、時代に変化した
仕事に対応できるようになる必要があります。職業人生の折り返し地点を越しても、常に、
学び続ける姿勢は必要です。
3.これからの大きな変化
「同一労働同一賃金」という考え方が、最近話題になっています。これは、正規雇用/
非正規雇用かに関係なく、同一の労働をしたのならば、同一レベルの賃金を払うべきだとする
考えです。「同一労働同一賃金」を実現するには課題が多いですが、今の中年の方たちが
雇用延長になるころには、実現しているかもしれませんので考えておきましょう。
現在は、雇用延長になると、雇用延長前と同じ仕事をしていても、給料が半分ぐらいになることが
よくあります。しかし、「同一労働同一賃金」という考え方を実施すると、雇用延長前と同じレベル
の給料になります。では、企業はこの「同一労働同一賃金」に対応するのでしょうか?
次のようなことが考えられます。
(1)雇用延長者の賃金を、雇用延長前の賃金と同じレベルにする。
(2)雇用延長者の業務内容を、雇用延長前の業務内容より、容易/責任の小さなものとして、
賃金を下げる。
(3)雇用延長前の賃金を下げ、雇用延長後の賃金へのスムーズな移行をする。
現実的には、(1)よりも、(2)や(3)が多いと筆者は予想しています。(2)や(3)になった時の
ためにも、モチベーションをどう維持していくか、マネープランに影響はないかを、中年期から
検討しておくのがよいでしょう。
現在の中年の方が、雇用延長になるころは、今までSFの世界の話だった、ロボットやAI
(artificial intelligence:人工知能)により、仕事の仕方が変わっている可能性があります。
働き続けるのならば、常に、新しい技術を身につけたり、仕事の幅を広げていったりする必要が
あります。
このように、キャリアの中長期的視点を考える際には、外部環境の把握・予測が大事になって
きます。中年になった人は、雇用延長はまだまだ先だと考えているかもしれません。しかし、
避けられない大きな変化が、近くにあるということを認識していただきたいと思います。避けられ
ない大きな変化に対応していくには、自分の強みを伸ばして、エンプロイアビリティを確保していく、
自ら新しい仕事を求めていくしかないのです。
次回は、「40歳定年」という考え方を紹介します。
以上
筆者プロフィール
泉田 洋一 氏(中央職業能力開発協会CSCスーパーバイザー)
学習院大学 理学部数学科卒
27年間、IT企業に勤務し、主に、人事、人材育成を担当。SEの新人/若手教育、選抜者研修/昇格者研修、キャリアデザイン研修(27歳、32歳、42歳、55歳)を担当。日本人材マネジメント協会会員。国家資格・1級・2級キャリアコンサルティング技能士。
メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅰ種合格。産業カウンセラー。 |
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