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2016年7月16日土曜日

業績不振を理由に従業員を解雇できるか?

<整理解雇とは?>

会社が業績不振で、会社側の都合により、人員整理のために労働契約を解除することを整理解雇といいます。法律上は普通解雇の一種ですが、労働慣例により他の普通解雇と区別するために、整理解雇という用語が使われています。

これは懲戒解雇や、きちんと働けないことによる普通解雇とは違って、解雇されることについて労働者に責任のない場合をいいます。

<では誰に責任が?>

会社の業績不振については、基本的に経営者側つまり経営者と経営者に近い立場の人たちに責任があります。

市場環境の変化や景気の変動による業績不振は、誰にも責任がないようにも見えますが、突き詰めて考えれば、変化に対応し切れなかった経営者の責任です。少なくとも労働者の責任ではありません。

たとえ、取引先の経営不振による影響を受けてしまった場合でも、厳しく考えれば、経営者の取引先管理が甘かったということになります。やはり、労働者の責任ではありません。

<道義的に考えて>

整理解雇された労働者は、経済的にも、社会的にも、精神的にも大きな痛手をこうむります。

ですから、責任のある経営者側から、責任のない労働者に退職を求めるのならば、道義的に考えて、まず経営者側が大きな負担をしたうえで、なお、会社の存続のためにどうしても必要ならば、労働者に深くお詫びをしたうえで行うことになります。


<法律上の制限は?>

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」という規定があります。〔労働契約法16条〕

しかし、これでは内容が抽象的すぎて、具体的な場合にその解雇が有効なのか無効なのか判断に困ります。


<整理解雇の有効性の基準となる4要素>

そこで実務的には、多くの裁判の積み重ねで示された4つの要素から、解雇の有効性を判断することになります。4つのうち1つでも要件を欠いていたら、解雇が無効になるということではなく、総合的に判断されます。



<要素1:経営上の人員削減の必要性>

事業の縮小が必要となり、どうしても余剰人員が出てしまうので、人員を削減せざるを得ないという状況が必要です。

昔の裁判では、厳格な判断が行われていて、人員を削減しなければ会社がつぶれてしまうような状況が必要とされていました。しかし、最近の裁判では、ある程度まで経営者側の判断を受け入れる傾向にあります。

それでも、客観的に会社の財政状況に問題を抱えているとはいえない場合や、新規採用を続けているような場合には、人員削減の必要性は否定されやすくなります。



<要素2:解雇回避の努力>

まずは、役員報酬の3割以上カットや、不採算店舗の閉店などを行い、それでも足りないときに、配置転換や希望退職者の募集などを行ったうえで、整理解雇に踏み切るなどの手順が必要です。

勤務地や職種を限定されて採用された従業員でも、解雇されるよりは異動のほうが負担が少ないということもあります。ですから、異動を考えないで解雇というわけにはいきません。



<要素3:解雇対象者の人選の合理性>

差別的な人選は許されません。会社に対して批判的・非協力的な社員から優先的に解雇ということもできないのです。

ただ、人選の基準は一律ではありません。転職が容易な若い人から優先的に解雇という基準も、人件費の高いベテランから優先的に解雇という基準も、それぞれに合理性が認められます。

会社としては、再建のために必要な優秀な人材は残しておきたいところですから、人選の合理的な基準の設定については頭を悩ませるところです。



<要素4:手続きの相当性>

経営者側がかなり前もって十分な説明をつくすこと、労働者側との誠実な協議など、労働者に不信感を残さないよう、慎重に手続きを進めることが求められます。



<整理解雇が無効とされる場合>

整理解雇の対象とされた労働者が、会社に対して裁判で整理解雇の無効を主張した場合には、会社は4つの要素について、やるべきことはやったという証明をしなければなりません。

もし、この証明に失敗すれば、労働者はまだ従業員の地位にあることが確認されます。そして、退職したものとされ支払われていなかった給与も、会社から支払わなければなりません。

整理解雇の無効を主張し、会社に戻りたいという労働者は、愛社精神にあふれているかただと思います。こうした労働者と会社が争うのは悲しいことです。

その一方で、整理解雇の対象となった人が、何人も会社に復帰したら、ますます会社の経営が苦しくなるのも事実です。

たしかに、会社は業績不振を理由に従業員を解雇できるのですが、以上のようなことを、よくよく考えたうえで行っていただきたいと思います。

2016年1月17日日曜日

経歴詐称を理由とする解雇及び、損害賠償請求が認められた事例

経歴詐称を理由とする解雇及び、損害賠償請求が認められた事例がありましたので紹介します。

K社事件
東京地裁平成27年6月2日判決

〈事案の概要〉
原告は被告会社に対して解雇の無効を主張して地位確認の訴えを提起した。解雇の理由
は、採用を決定するに際して被告が必要であるとする技術を持っていないにも関わらず、
技術があると主張し(また技術があると主張することによって給与の増額をさせていた)、
日本語ができるとの主張もしていたが日本語能力も必要なレベルになかった。
そこで被告会社は原告に対して詐欺による損害賠償請求を求める反訴を提起した。

〈判旨〉
労使関係は「相互の信頼感家を基礎とする継続的契約関係であるから、使用者は、労働
力の評価に直接かかわる事項や企業秩序の維持に関係する事項について必要かつ道理的な
範囲で申告を求め、あるいは確認をすることが認められ、これに対し、労働者は、使用者
による全人格的判断の一資料である自己の経歴等について虚偽の事実を述べたり、真実を
秘匿してその判断を誤らせることがないように留意すべき信義則上の義務を負うものと解
するのが相当である。」として解雇を有効とした。
「労働者が、前記のように申告を求められ、あるいは確認をされたのに対し、事実と異な
る申告をするにとどまらず、より積極的に当該申告を前提に賃金の上乗せを求めたり何ら
かの支出を働きかけるなどした場合に、これが詐欺という違法な権利侵害として不法行為
を構成するに至り、上乗せした賃金等が不法行為と相という因果関係のあるソンガイにな
るものと解するのが相当である。」として、会社に対して上乗せを求めた金額を会社の損害
として、原告に損害賠償義務があると判示した。

〈解説〉
本件は採用面接時に虚偽の事実を述べて入社した従業員の解雇事例である。求めていた
能力を欠いていたために経営者が頭を悩ます事案は比較的多いのではないかと思われる。
本件は、プログラムを作成する会社に入社した外国人の案件である。求められるのは、
プログラムを作れるか、という点と、ビジネスで使えるレベルの日本語が話せるかであ
る。