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2018年11月28日水曜日

「65歳以上への継続雇用年齢の引上げ」について(経済財政諮問会議中間整理案)

 平成30年11月26日に、首相官邸において、「平成30年第15回経済財政諮問会議、第22回未来投資会議、まち・ひと・しごと創生会議、規制改革推進会議合同会議」が開催されました。
 この会議では、経済政策の方向性に関する中間整理案及び平成31年度予算編成の基本方針について議論が行われました。
 中間整理案では、「65歳以上への継続雇用年齢の引上げ」についても取り上げられています。
 次のような方向で、来夏に決定予定の実行計画において具体的制度化の方針を決定した上で、労働政策審議会の審議を経て、早急に法律案を提出することを検討しているようです。

65歳以上への継続雇用年齢の引上げ 

(働く意欲ある高齢者への対応)
・人生100年時代を迎え、働く意欲がある高齢者がその能力を十分に発揮できるよ う、高齢者の活躍の場を整備することが必要である。
・高齢者の雇用・就業機会を確保していくには、希望する高齢者について70歳までの就業機会の確保を図りつつ、65歳までと異なり、それぞれの高齢者の希望・特性に応じた活躍のため、とりうる選択肢を広げる必要がある。このため、多様な選択肢を許容し、選択ができるような仕組みを検討する。
(法制化の方向性)
・70歳までの就業機会の確保を円滑に進めるには、法制度の整備についても、ステップ・バイ・ステップとし、まずは、一定のルールの下で各社の自由度がある法制を検討する。
・その上で、各社に対して、個々の従業員の特性等に応じて、多様な選択肢のいずれかを求める方向で検討する。
 ・その際、65歳までの現行法制度は、混乱が生じないよう、改正を検討しないこととする。
(年金制度との関係)
・70歳までの就業機会の確保にかかわらず、年金支給開始年齢の引上げは行うべきでない。他方、人生100年時代に向かう中で、年金受給開始の時期を自分で選択できる範囲は拡大を検討する。
(今後の進め方)
・来夏に決定予定の実行計画において具体的制度化の方針を決定した上で、労働政策審議会の審議を経て、早急に法律案を提出する方向で検討する。
(環境整備)
・地方自治体を中心とした就労促進の取組やシルバー人材センターの機能強化、求人先とのマッチング機能の強化、キャリア形成支援・リカレント教育の推進、高 齢者の安全・健康の確保など、高齢者が活躍の場を見出せ、働きやすい環境を整備する。

2018年11月15日木曜日

雇用年齢を引き上げ方針(未来投資会議)


 政府は二十二日、首相官邸で開いた未来投資会議で、企業が雇用を継続する年齢について、現行の六十五歳から七十歳に引き上げる方針を示しました。雇用年齢引き上げは、安倍政権が進める全世代型社会保障改革の柱。法律上の義務にするかどうかや、引き上げ方などは今後検討する予定です。
 現行の高年齢者雇用安定法は、定年延長や継続雇用制度導入などで希望者全員を六十五歳まで雇用するよう企業に義務付けています。
 雇用年齢の延長は、高齢者の働き方を柔軟化するほか、年金などの社会保障費抑制や労働力確保などの狙いもあります。一方、企業側には人件費が高騰するとの懸念があります。
 雇用延長の現状や問題点についての記事をまとめてみましたので、参考にしてください、
特集「超高齢社会 拡大し続けるシニア雇用」トップ

 業績に億単位で貢献するシニアを生み出す 大和ハウス工業の人事制度
 60歳を超えても賃金が下がらない 日本ガイシの65歳定年制
 学習院大名誉教授・今野浩一郎氏が語る 高齢者雇用の問題点と解決法

その他の記事

当事務所は中央職業能力開発協会のキャリア・シフトチェンジのためのワークショップの公認インストラクターです。

キャリア・シフトチェンジのためのワークショップとは40代半ば以降のビジネスパーソンを対象に、シニア世代になっても活き活き働き続けるために必要な能力(プラットフォーム能力)を学ぶための研修です。

詳細は下記のホームページをご参照ください。

職業能力開発協会キャリア・シフトチェンジのワークショップ


2018年9月28日金曜日

定年延長に関する冊子を公表(高齢・障害・求職者雇用支援機構)

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構から、「定年延長、本当のところ―調査結果から読み解く、課題と効果―」という冊子が公表されました(平成30年9月25日公表)。


 独)高齢・障害・求職者雇用支援機構では、生涯現役社会実現に向けて、企業を対象に、定年延長、継続雇用延長を働きかけています。
その際、企業の方からよく聞かれるは、次の3つということです。
1.定年延長、継続雇用延長を行うとどんな良いことがあるのか
2.定年延長、継続雇用延長を行ううえで何が課題であり、どう対処すればよいのか
3.実際のところ、どのような制度にすればいいのか

 この冊子では、これら3つの疑問に迫り、さらに、定年延長の効果が大きいのはどのような企業なのか、などについての分析結果も紹介しています。
 企業の皆さまに、定年延長について考えていただくための材料を提供することを目的として作成した冊子ですので、高齢者雇用を考える際に参考にしてみてください。

詳しくは、こちらをご覧ください。
<定年延長、本当のところ―調査結果から読み解く、課題と効果―>

2018年5月23日水曜日

「年齢にかかわりない転職・再就職者の受入れ促進のための指針」の策定について

 平成29年3月28日に働き方改革実現会議において決定された「働き方改革実行計画」では、多様な選考・採用機会の拡大に向け、転職者の受入れ促進のための指針の策定が掲げられております。

職業キャリアが長期化し、働き方のニーズが多様化するとともに、急速な技術革新や産業・事業構造の変化によって、企業・労働者双方において中途採用、転職・再就職ニーズが高まっており、転職・再就職が不利にならない柔軟な労働市場や企業慣行の確立が求められています。
こうした観点に立ち、企業が転職・再就職者の受入れ促進のため取り組むことが望ましいと考えられる基本となるべき事項等を示した「年齢にかかわりない転職・再就職者の受入れ促進のための指針」を策定し、本日公布・施行しましたので、お知らせします。

2018年5月18日金曜日

高齢者の雇用拡大は国家的課題 (第7回人生100年時代構想会議)

 平成30年5月16日に首相官邸で開催された「第7回人生100年時代構想会議」の資料が公表されました。

 今回の会議では、 各企業にとって身近な問題である「高齢者雇用」も議題とされました。
 議長である安倍内閣総理大臣は、本日の議論を踏まえ、次のように述べています。
・意欲ある高齢者に働く場を準備する。そのことは働きたいと考える皆さんの希望をかなえるためにも、またあるいは人口減少の中で潜在成長力を引き上げるためにも、非常に大事。
・官民を挙げて取り組まなければならない国家的課題といえる。
 具体的には、
・1人でも中高年の中途採用経験がある企業は、2人目以降の採用にも積極的になる傾向があるため、高齢者のトライアル雇用を促進する方策を進めていく。
・高齢者の働く機会は年功序列的な一律の処遇ではなく、成果を重視する評価・報酬体系を構築することで広がっていくと考えられる。これらの取組により、65歳以上の将来的な継続雇用年齢の引き上げに向けて環境整備を進めていく。

 政府は、これを踏まえて議論を進め、今年6月にまとめる基本構想に反映させるとのことです。 今後の動向に注目です。
 詳しくは、<第7回人生100年時代構想会議/資料>をご覧ください。
資料1高齢者雇用 参考資料 (PDF:1,015KB) PDFを別ウィンドウで開きます
資料2リンダ・グラットン議員との意見交換会資料、議事要旨 (PDF:2,861KB) PDFを別ウィンドウで開きます
資料3林文部科学大臣 提出資料 (PDF:973KB) PDFを別ウィンドウで開きます
資料4高橋 進 議員 提出資料 (PDF:288KB) PDFを別ウィンドウで開きます
資料5三上洋一郎議員 提出資料 (PDF:419KB) PDFを別ウィンドウで開きます
資料6神津里季生議員 提出資料 (PDF:374KB) PDFを別ウィンドウで開きます
資料7樋口 美雄議員 提出資料 (PDF:529KB) PDFを別ウィンドウで開きます
資料8宮本 恒靖議員 提出資料 (PDF:496KB) PDFを別ウィンドウで開きます
資料9若宮 正子議員 提出資料 (PDF:181KB) PDFを別ウィンドウで開きます
資料10加藤厚生労働大臣 提出資料 (PDF:161KB) PDFを別ウィンドウで開きます
資料11松山一億総活躍担当大臣 提出資料 (PDF:427KB) PDFを別ウィンドウで開きます

2018年4月16日月曜日

65歳超雇用推進助成金 平成30年4月からの変更内容(高齢・障害・求職者雇用支援機構)

 平成30年4月からの雇用関係の助成金の見直しは、これまでにもお伝えしているところですが、個別の助成金について、詳細を定めたパンフレットなども、徐々に公表されています。

 ここでは、「65歳超雇用推進助成金」の平成30年4月以降の内容を紹介している「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構」のホームページを紹介します。
 実際の申請は、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構となります。過去の変更内容等も紹介され、とても分かりやすくなっていますのでご参照ください。
65歳超雇用推進助成金(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 

2018年3月8日木曜日

65歳超雇用推進マニュアルの改定版などを公表(高齢・障害・求職者雇用支援機構)

 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構から、「65歳超雇用推進マニュアル(その2=改訂版)」及び「65歳超雇用推進事例集」を掲載したとのお知らせがありました(平成30年2月22日掲載)。

●「65歳超雇用推進マニュアル(その2)」は、「65歳超雇用推進マニュアル」の改訂版です。退職金制度の解説を充実させ、業種別ワンポイントアドバイスや就業規則(参考例)など役に立つ情報を追加。また、事例を大幅に入れ替え
、22事例がコンパクトに紹介されています。
●「65歳超雇用推進事例集」は、65歳以上の定年制、雇用上限年齢が65歳超の継続雇用制度を導入している企業の中から、規模、業種、地域などを勘案して選定した23事例を詳しく紹介するもの。読者が利用しやすいように定年・継続雇
用制度別、キーワード別、地域別などの索引も用意されています。
 詳しくは、こちらをご覧ください。
<65歳超雇用推進マニュアル(その2)」
http://www.jeed.or.jp/elderly/data/q2k4vk000000tf3f-att/q2k4vk000001c9rh.pdf

2017年8月2日水曜日

「技術革新とこれからの働き方などに適応した基本的な政策の方針」 労働政策基本部会が初会合


 厚生労働省は、先月31日に開催された「第1回労働政策審議会労働政策基本部会」の資料などを公表しました。
 この部会、労働政策審議会の部会の一つとして新たに設置されたものですが、
全体的なテーマは、「技術革新とこれからの働き方に適応した基本的な政策の方針について」です。
具体的なテーマは下記の9つです。
1. 同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善
2. 賃金引き上げと労働生産性の向上
3. 時間外労働の上限規制の在り方など長時間労働の是正
4. 雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人材育成、
格差を固定化させない教育の問題
5. テレワーク、副業・兼業といった柔軟な働き方
6. 働き方に中立的な社会保障制度・税制など女性・若者が活
躍しやすい環境整備
7. 高齢者の就業促進
8. 病気の治療、そして子育て・介護と仕事の両立
9. 外国人材の受入れの問題
来年6月頃までに報告書を取りまとめる予定です。
基本的な考え方は下記の「働き方改革について」をご覧ください。
 詳しくは、こちらをご覧ください。
<第1回労働政策審議会労働政策基本部会議事次第>
・ http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000173132.html

2017年7月13日木曜日

「働き方改革」まったなし!(1)平成31年4月の施行に向けて

 平成28年9月に発足した「働き方改革実現会議」の議論を踏まえ、働き方改革の概要が固まってきましたので、今後の予定を含め、お伝えします。
 今回は概要をお伝えし、今後順次、詳細についてお話ししたいと思いますのでご期待ください。

 働き方改革の目玉は次の3つです。

1.同一労働同一賃金の実現など非正規雇用の待遇改善
2.長時間労働の是正
3.高齢者の就労促進

 今までの進捗状況と今後のスケジュール

平成28年6月  ニッポン一億総活躍プラン閣議決定
平成28年9月  働き方実現会議発足
平成28年12月  同一労働同一賃金ガイドライン案公表
平成29年3月  働き方改革実行計画公表
平成29年6月  時間外労働の上限規制等について(建議)公表
平成29年6月  同一労働同一賃金に関する法整備について(報告)公表
平成29年秋    関連法案の提出
平成31年4月  施行

 安倍総理の強いリーダーシップのもと、この働き方改革は始まりました。
特に、同一労働同一賃金に関しては、最初にガイドライン案が示され、それに沿って法整備が行なわれようとしています。これは異例のことです。働き方実現会議では労使双方のトップと有識者が入って議論していますので、この方向が大きく変わることはないと思います。「平成31年4月施行はまったなし!」それまで何も対応しないでは許されない状況になっています。

下記に参考資料を紹介しておりますのでご一読ください。

  ニッポン一億総活躍プラン(閣議決定)(平成28年6月)
  一億総活躍社会の実現に向けて(28年7月厚生労働白書)
  働き方改革に関する安倍総理発言(平成28年9月)
  同一労働同一賃金ガイドライン案(平成28年12月)
  時間外労働の上限規制等に関する労使合意(平成29年3月)
  働き方改革実行計画(本文)(平成29年3月)
  働き方改革実行計画(概要)(平成29年3月)
  働き方改革参考資料(平成29年5月)
  時間外労働の上限規制等について(建議)(平成29年6月)
  同一労働同一賃金に関する法整備について(報告)(平成29年6月)

2017年7月9日日曜日

【平成29年度】使いやすい助成金

今日は厚生労働省の助成金についてご紹介したいと思います。

この助成金の特徴は下記の通りです。
○助成金は返済不要!
○財源は労働保険料の事業主負担分
○労働保険の適用事業所であることが要件
○労働保険料の滞納がないこと
○出勤簿、賃金台帳、雇用契約書、就業規則など、法律で作成が義務付けられている帳簿を備えていること
 要件にあてはまれば返済不要で原則として支給される助成金ですが、労働保険料の納付や作成義務のある帳簿を備えていることが要件です。

【平成29年度】使いやすい助成金一覧

(1) 「キャリアアップ・人材育成」 に役立つ助成金

(4) 「健康診断」に役立つ助成金

(5) 「採用・雇用」に役立つ助成金

2017年7月2日日曜日

65歳定年時代の「老害シニア対策」とは?

 経営コンサルタントの川崎隆夫さんが「老害シニア対策」についてまとめた記事を見つけましたので紹介します。
 シニア層に属する50歳以上のいわゆる「老害社員」には、いくつかのタイプがあるとのこと。その代表的なものは、以下の通りです。

1)労働意欲欠如タイプ:
2)時代錯誤タイプ:
3)ミスマッチタイプ:
4)高プライドタイプ:

詳細については下記のブログをご参照ください。

65歳定年時代の「労害シニア対策」とは?(川崎隆夫 経営コンサルタント)

2017年5月14日日曜日

遺言と相続そして成年後見セミナー開催の件

 2017年5月13日 団塊社労士Mが「遺言と相続そして成年後見セミナー」の講師を勤めました。当日は雨にもかかわらず、35名の方に参加いただき、セミナー終了後には個別相談も行いました。

セミナーの模様はこちら

自民党 一億総活躍推進本部が提言をとりまとめ


 自民党は、一億総活躍推進本部がとりまとめた「一億総活躍社会の構築に向けた提言」を公表しました。これは、同本部に置かれた6つのプロジェクトチームの提言を取りまとめたものとなっています。
●65歳以上のシニアの働き方・選択の自由度改革に関する提言
 「定年の引上げ(まず、公務員の定年を65歳に)」、「年金の支給開始年齢の後ろ倒しを可能にする(71歳以降からの受給開始を選択できるようにする)」などを提言
●誰もが活躍する社会に関する提言
 「留学生の就労時間延長(マイナンバーを活用して就労(資格外活動)実態の管理を徹底した上で、上限時間(現行は週28時間)を緩和)」を提言
 65歳以上のシニアの働き方・選択の自由度改革に関する提言においては、「65歳までは完全現役」、「70歳まではほぼ現役」とし、75歳までは可能な限り支え手に回ってもらえるようにする、といった考え方も示されています。
 そのこともあって、今回の年金の支給開始年齢に関する提言は、結局のところ、年金の原則的な支給開始年齢(現行65歳)の引き上げの布石ではないか、といった声も上がっています。
 
詳しくは、こちらをご覧ください。
<一億総活躍社会の構築に向けた提言>
https://jimin.ncss.nifty.com/pdf/news/policy/134900_1.pdf

2017年2月3日金曜日

シニア雇用の小冊子作成

東京商工会議所江戸川支部は、中小企業向けに60歳以上の雇用事例を集めた冊子「高齢社員活躍ハンドブック」を作成した。技術職や管理職など経験が豊富なシニア社員を戦力として、若手社員の育成や経営力の強化に役立てている都内の中小7社を紹介。

高齢社員活躍ハンドブックはこちら

2017年1月27日金曜日

『キャリア支援の視点から見る「中年の危機」』(第6回)

中央職業能力開発協会のCSCスーパーバイザー泉田洋一氏が、中央職業能力開発協会のホームページ
「キャリア塾」に2016年7月より2016年12月まで6回にわたり連載された内容をご紹介します。

私(井上雅夫)も中央職業能力開発協会「CSCのためのワークショップ」の公認インストラクターです。
CSCとはキャリア・シフトチェンジのことで、現在40代半ばから50代の方が、シニア世代になっても
職場の戦力として活き活き働くためにはどうしたらよいかを自ら考え、今後の行動変容を促すための研修です。

CSCのためのワークショップについてはこちら


『キャリア支援の視点から見る「中年の危機」』(第6回)
1.「中年」とは
この連載では、『キャリア支援の視点から見る「中年の危機」』を、企業/人事部門の観点
から紹介していきます。
☆この連載では、「中年」を45歳~54歳ぐらいの方とします。
☆中年期は人生の折り返し地点でもあり、職業人生の折り返し地点でもあります。

前回は、「キャリアデザイン研修」の実施の仕方について説明をしました。
最終回の今回は、「中年」のキャリア形成に必要な行動について説明します。



2.現在のキャリア形成の考え方
従来、キャリア形成をするには、「自己理解」と「仕事理解」を行い、マッチングをするのが
よいと言われてきました。しかし、変化の早い現在では、「自己理解」と「仕事理解」だけで
なく、「環境理解」も必要になってきています。この「環境理解」には、現在の環境を理解する
だけではなく、これからの環境がどう変わっていくのかを予想する、ということも含みます。


3.変化に対応できるか
「中年」の方が職業人になった頃と、現在とでは、自分の仕事能力、仕事に関する考え方、
仕事の仕方、仕事上のポジションは、大きく変わっているでしょう。また、技術革新により、
仕事の環境も、以前とは大きく変わっていますし、これからも大きく変化していくでしょう。
職業人は、その環境の変化に対応していかないと、企業にとってお荷物になってしまい
ます。お荷物にならないためにも、変化に対応する行動を取ることが必要になってきます。
変化への対応がしづらくなってくる人は、新しいことに興味がなくなり、過去のことに話が
向いてしまいます。以下のような傾向があるように思えます。

・新しい技術への興味がない
・新しい人的ネットワークを作っていない
・飲み会/食事会は、決まったメンバーで行く
・自分の過去の自慢話をちょくちょくする
・面倒だという発言が多くなってきた
・「最近の若い者は」と発言するようになってきた



4.変化に対応する行動
「中年」になると、新しいことを実行する際、過去の成果や経験、経歴が邪魔をすることが
よくあります過去に成功したやり方や古くなった技術スキルに固執したり、立場を守るため
失敗を恐れて行動が出来なくなったりするからです。変化への行動をして、失敗してしまうと
今の立場はどうなるのだろうかという気持ちが出てくるのは当然でしょう。若い頃は、見た
こと、聞いたこと、経験したことをどんどん吸収していきましたが、「中年」になると、既知の
ことや経験したことが多くなり、行動する前から、どうなるかを予測してしまい実行しなくなる
こともあります。
このように、多くの中年の方は、変化に対応する行動をとるとき、色々な悩みや迷いが
生じます。しかし、何もしなければ、変化への対応ができるはずはありません。
「変化に対応する行動」をとるためには、まずは、色々なものを「手放す行動」が必要
になってきます。手放すものには、過去の成功体験、年下に教わることへの抵抗感、
しくじることの恥ずかしさなどがあります。これらを捨ててから、「新しい環境に対応して
いく行動」へと移れます。

手放すものには、次のようなものがあります。

○過去の成功体験への固執
成功体験は大事ですが、過去のものです。成功体験の気分をいつまでも持ち続ける
のではなく、手放してしまうことが大事です。成長の糧になるのは、過去の成功体験
ではなく、「成功するために行った努力や行動」です。
○知らないことを聞くのは恥だという意識
「中年」になると後輩や部下に、自分が知らないことを恥ずかしくて聞けないという
気持ちが出てくる人が多くなります。後輩たちに自分の弱みや格好悪い部分を見られ
たくないという気持ちが働くからです。「聞くことを恥だ」と思うより、「知らないままにして
いたり、知ろうとしなかったりすることを恥と考える」いう意識に変えていきましょう。
〇しくじりが恥ずかしいという意識
しくじればしくじるほど、行動したくないという気持ちが強化されます。しくじるぐらい
ならば、何もしない方がいいという論理を作ってしまい、行動しなくなります。「変化に
対応したためにしくじるのが駄目なのではなく、変化に対応しない気持ちが駄目なのだ」
と考え直してください。



5.人事部門や企業が「中年」に対してできること
「変化に対応する行動をする人を大切にする」という経営者のメッセージを発信すること
が大事です。人事部門や企業は、そういう行動をする人が損をしない制度をつくる必要が
あります。しくじりをしたらバツを付けるのではなく、「素晴らしい挑戦だ」と評価してあげる
仕組みをつくることが大事です。「中年」が挑戦する姿を見て、若い世代の人たちも挑戦し、
成長していくはずです。そのようなよい風土を作ること、変化に適応できる企業になる
仕組みを作ることが、人事部門の役割です。



6.連載を振り返って
第1回は「中年」についてのイメージを共有しました。第2回では外部環境変化の把握・
予測が大事であることを、第3回では変化に適応するための「40歳定年制」という考え方を
説明しました。変化に適応していくうえで、第4、5回は「キャリアデザイン研修」で「キャリアの
棚卸し」をし、自己理解や環境理解をすることが大事であることを、そして、第6回は、変化に
適応するためには、まず、手放す行動が大事だと説明しました。この連載のキーワードは、
「変化への適応」です。若い頃は自然に対応できていた「変化への適応」を、「中年」以降は、
意識して実施していく必要があります。その意味を込めて、次のフレーズで、この連載を
終えたいと思います。
「強い者が生き残るのではない。変化に適応できる者が生き残るのだ」
                                          以上

筆者プロフィール
泉田 洋一 氏(中央職業能力開発協会CSCスーパーバイザー)
学習院大学 理学部数学科卒
27年間、IT企業に勤務し、主に、人事、人材育成を担当。SEの新人/若手教育、選抜者研修/昇格者研修、キャリアデザイン研修(27歳、32歳、42歳、55歳)を担当。日本人材マネジメント協会会員。国家資格・1級・2級キャリアコンサルティング技能士。
メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅰ種合格。産業カウンセラー。

『キャリア支援の視点から見る「中年の危機」』(第5回)

中央職業能力開発協会のCSCスーパーバイザー泉田洋一氏が、中央職業能力開発協会のホームページ
「キャリア塾」に2016年7月より2016年12月まで6回にわたり連載された内容をご紹介します。

私(井上雅夫)も中央職業能力開発協会「CSCのためのワークショップ」の公認インストラクターです。
CSCとはキャリア・シフトチェンジのことで、現在40代半ばから50代の方が、シニア世代になっても
職場の戦力として活き活き働くためにはどうしたらよいかを自ら考え、今後の行動変容を促すための研修です。

CSCのためのワークショップについてはこちら


『キャリア支援の視点から見る「中年の危機」』(第5回)


1.「中年」とは

この連載では、『キャリア支援の視点から見る「中年の危機」』を、企業/人事部門の観点から紹介していきます。
☆この連載では、「中年」を45歳~54歳ぐらいの方とします。
☆中年期は人生の折り返し地点でもあり、職業人生の折り返し地点でもあります。

前々回は、「中年」は仕事人生の中間地点であり、長い残りの仕事人生を充実するためには
一度立ち止まり、「キャリアの棚卸し」をすることが大切であることを説明しました。続いて、前回は、
「キャリアの棚卸し」の仕方について説明をしました。社員に「キャリアの棚卸し」をしていただくため
に、人事・人材開発部門が中心になって、「キャリアデザイン研修」を実施することがあります。
今回は、この「キャリアデザイン研修」の実施の仕方について、説明します。

2.「中年」向けキャリアデザイン研修でどんな項目を実施するのか?

(1)「中年」向けキャリアデザイン研修実施の目的の説明
キャリアデザイン研修を実施すると、「肩たたき研修」だと思われてしまうことがよくあります。
この研修実施の目的は、「「中年」という仕事人生の半分を迎えた受講者の方々に、残りの
仕事人生を充実したものにして頂く」ことであることを、受講者に理解してもらいます。
できれば、人事担当役員や人事部長から、受講者に直接伝えてもらうのがよいでしょう。
また、受講者の上司にも、書面にて、実施の目的を伝えておき、上司からも受講を勧めて
もらうようにすることが大事です。なお、人事・人材開発部門は、「中年」だけでなく、定年を
迎える方向けのキャリアデザイン研修もセットにした、キャリアデザイン研修体系を作るのが
よいでしょう。
(2)現在・未来-外部環境認識の説明
「中年」の受講者は、社会人になって20年ぐらいでしょう。その間に、世の中がどう変化してきた
のか、そしてこれからどう変化していきそうなのか、それに合わせて会社はどう変わっていこうと
しているのか。受講者も変化に対応してもらう必要があることを説明します。しかし、世の中/
企業が、これからどうなるのかは、予想がつきにくいものです。技術革新を考えると、企業人生
の前半の20年間より、後半の残りの20年間はもっと大きな変化が起こると覚悟してもらう必要
があるでしょう。
(3)現在・未来-自分にこれから起こりそうなことを考えていただく
残りの人生にどのようなイベントが起こるのかを考えて、マネープランを作成します。イベントと
しては、マイホームの購入、子供の進学・結婚等があり、このようなときに、どうしてもお金が
必要になります。また、忘れてはならないのが、親の介護の問題です。子の立場としては、
親の介護は想像したくないことですが、介護離職が多くなっている現在、「中年」の受講者には、
キャリアデザイン研修受講の機会に、しっかり考えておいてもらいましょう。また、親が介護状態
になったときに、親は、家で子に面倒をみてもらいたいと思っているのか、施設に入りたいのか
は、子としては親に聞きづらいものです。しかし、「会社の研修で、宿題として聞いてこいと
言われた」というと、聞きやすくなります。
(4)会社の制度の説明
親の介護や雇用延長に関して、会社の制度を理解してもらいます。制度を知らずに苦しんで
いる社員もいます。人事・人材開発部門としては、このような研修の機会を活用し、制度を周知
させることも大事です。
(5)キャリアの棚卸しとキャリア計画の立案
マネープランを考えたときに、多くの方は働き続けないと生活が出来ないと思うでしょう。働き
続けることは、成果を出し続けることです。成果を出し続けるための強みを、「キャリアの棚卸し」
で見つけます。「中年」になるまでに働いてきたことを振り返り、何が自分の強みなのかを理解
します。前回説明したように、その強みの中に、陳腐化して使えなくなった強みがあるでしょう。
「キャリアの棚卸し」で得た強みを、いつまでに、ブラッシュアップする必要があるのか、何を
新しく身につける必要があるのかのキャリア計画を立てます。
3.「中年」キャリアデザイン研修実施上の問題とその対応

(1)何歳を受講対象者にすればいいのか?
対応:仮に、45歳を受講対象者にしたいと思っても、「まだ、早い」というような意見が多く
出るでしょう。ならば、もう少し上の47~48歳ぐらいから始めましょう。キャリアデザイン研修を
受講すると、自分を振り返ることにより、自己効力感が増していきます。すると、「あの研修は、
いい研修だ」とか、「あの研修は受講しておいた方がいい」という声があがり、「もっと早く
受けたかった」という声が聞こえてきます。そうなった時、少しずつ、受講対象者の年齢を
下げていくのがいいでしょう。
(2)「受講後、会社を辞める人が増えるのではないか?」、「寝た子を起こすな」と言われる。
対応:もし、会社を辞める人が増えると思うのならば、その会社が社員にとって魅力がない
のかもしれません。キャリアデザイン研修の問題ではなく、会社の制度等の問題ではない
でしょうか? まずは、会社の制度、たとえば、人事制度を見直し、魅力的な会社にする方
が先決だと思います。
今回は、「キャリアデザイン研修」の実施の仕方について説明をしました。

次回、最終回は、「中年」のキャリア形成に必要な行動について説明します。
                                                    以上
筆者プロフィール
泉田 洋一 氏(中央職業能力開発協会CSCスーパーバイザー)
学習院大学 理学部数学科卒
27年間、IT企業に勤務し、主に、人事、人材育成を担当。SEの新人/若手教育、選抜者研修/昇格者研修、キャリアデザイン研修(27歳、32歳、42歳、55歳)を担当。日本人材マネジメント協会会員。国家資格・1級・2級キャリアコンサルティング技能士。
メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅰ種合格。産業カウンセラー。

『キャリア支援の視点から見る「中年の危機」』(第4回)

中央職業能力開発協会のCSCスーパーバイザー泉田洋一氏が、中央職業能力開発協会のホームページ
「キャリア塾」に2016年7月より2016年12月まで6回にわたり連載された内容をご紹介します。

私(井上雅夫)も中央職業能力開発協会「CSCのためのワークショップ」の公認インストラクターです。
CSCとはキャリア・シフトチェンジのことで、現在40代半ばから50代の方が、シニア世代になっても
職場の戦力として活き活き働くためにはどうしたらよいかを自ら考え、今後の行動変容を促すための研修です。

CSCのためのワークショップについてはこちら


『キャリア支援の視点から見る「中年の危機」』(第4回)


1.「中年」とは
この連載では、『キャリア支援の視点から見る「中年の危機」』を、企業/人事部門の観点から
紹介していきます。
☆この連載では、「中年」を45歳~54歳ぐらいの方とします。
☆中年期は人生の折り返し地点でもあり、仕事人生の折り返し地点でもあります。

前回は、「中年」は仕事人生の中間地点であり、長い後半の仕事人生を充実させるためには、
一度立ち止まり、「キャリアの棚卸し」をする大切さを説明しました。今回は、「キャリアの棚卸し」
の意味とそのやり方、注意点について説明します。

2.「キャリアの棚卸し」とは

一般に、棚卸しとは、商品・製品などの在庫の数を、実際に数えることです。数える際に、品質の
確認も行います。棚卸しをすることで、陳腐化した商品・製品や入手した時より価値が下がっている
もの、また使えなくなったもの、必要価値がなくなっているものを知ることができます。

「キャリアの棚卸し」では、一般的な棚卸しと似たような考え方をします。「キャリアの棚卸し」は、
これまで自分が携わってきた仕事や学習について振り返り、何ができるのか、どんな経験をして
きたのかを、整理する作業です。

皆さん自身が、一つの企業だと考えると、自分という企業が生き残るためには、どんな「売れるもの
=強味(知識、スキル、経験 等)」を持っているか、「売れるもの=強味」の現在の商品価値を
把握することが必要です。働く人は、「キャリアの棚卸し」を実施し、いつでも、自分の売れるものを
用意しておく必要があります。

3.「キャリアの棚卸し」の仕方

商品・製品は、物体として目に見えますが、知識やスキルは目に見えません。さらに、商品・製品
などの在庫と違い、台帳がありません。これが、一般の棚卸しより、「キャリアの棚卸し」の難しい点
です。
台帳がないのですから、台帳を作ることから、「キャリアの棚卸し」を始めます。台帳を作るために、
これまで自分が携わってきた仕事や学習歴について振り返り、何ができるのか、どんな経験をして
きたのかを、書き出します。
実際には、職務経歴書を用いて、記入していくのが良いでしょう。職務経歴書を書くことにより、
どんな時に、どんな仕事をしたか、どんなことを身に着けたかが思い出せます。人事部門に聞けば、
自分が入社後、どんな部署に在籍していたのかを教えてくれると思います。転職の場合は、過去の
職務経歴書や履歴書が役に立つでしょう。異動の年月を正確に把握する必要はありません。
重要なのは、どんな仕事をしたのかを思い出せることです。
過去、どんな部署にいたのかがわかった後は、どの部署でどんな仕事をしたか、その仕事のために
どんな知識やスキルを身に着けたかを、書き出します。ここで終わりにしてしまう方が多いのですが、
ここからが、重要な作業となります。
一般の棚卸しでは、陳腐化した商品・製品は、破棄するなり、安売りをしたりして、仕入れた時の値段
よりも安くなることがあります。「キャリアの棚卸し」でも、知識、スキルが陳腐化していないか、身に
着けた時点より必要価値が下がっていないか、今も必要とされているものなのかを評価することが
必要になります。世の中の技術革新が急激に進み、過去に身に着けた知識やスキルが不要になって
しまうことさえあるのです。陳腐化する迄の時間がどんどん短くなってきていることは否定できないで
しょう。ですから、自分の強味を、再評価をすることは必須となります。


自分の強味の現在価値を把握しよう


先ほど、どのような知識、スキルを身に着けたか、どんな経験をしたかを書き出しました。それらに
対して、次の3つに分類します。

(1)そのままこれからも使えそうなもの。
(2)ブラッシュアップが必要なもの。
(3)陳腐化して、今は使えないもの。


(1)に対しては、「本当に、このまま使えるのか?」と厳しい目で見てください。
(2)に対しては、いつまでに、どのような状態までブラッシュアップするのか、そのためには何を
したらいいのかを具体的に考えてください。
(3)と認めることはつらいことです。「中年」になるまでの長い時間を掛けて身に着けた知識、
スキルが陳腐化しているとか、不要になったと自分で認めることは、難しいことです。しかし、
この現実を直視しないと前へとは進めません。企業人事の立場から言えば、「過去に何が
できた」ではなく、「今、何ができる(成果を出せる)、成果を出せた」という点で、給与を決め
ます。ですから、「キャリアの棚卸し」をしながら、「この知識、スキルは、いつまで使えるのか?
と、必ず問いかけてください。この問いは、「中年」の方の後半の仕事人生を生き抜くために、
重要なものです。陳腐化した知識やスキルが多いのならば、新しい知識やスキルを身に着け
なければなりません。また、過去に身に着けた知識やスキルが今の仕事ではあまり価値はないが、
他の仕事で役立つのならば、仕事を変えるという選択肢もあるでしょう。これらは、前回、
説明した「40歳定年制」の考え方であるとも言えるでしょう。



今回は、「キャリアの棚卸し」の意味とそのやり方、注意点について説明をしました。社員に「キャリアの
棚卸し」をしていただくために、人事・人材開発部門が中心になって、「キャリアデザイン研修」を
実施することがあります。次回は、「キャリアデザイン研修」の実施の仕方について説明します。

以上



筆者プロフィール
泉田 洋一 氏(中央職業能力開発協会CSCスーパーバイザー)
学習院大学 理学部数学科卒
27年間、IT企業に勤務し、主に、人事、人材育成を担当。SEの新人/若手教育、選抜者研修/昇格者研修、キャリアデザイン研修(27歳、32歳、42歳、55歳)を担当。日本人材マネジメント協会会員。国家資格・1級・2級キャリアコンサルティング技能士。
メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅰ種合格。産業カウンセラー。

『キャリア支援の視点から見る「中年の危機」』(第3回)

中央職業能力開発協会のCSCスーパーバイザー泉田洋一氏が、中央職業能力開発協会のホームページ
「キャリア塾」に2016年7月より2016年12月まで6回にわたり連載された内容をご紹介します。

私(井上雅夫)も中央職業能力開発協会「CSCのためのワークショップ」の公認インストラクターです。
CSCとはキャリア・シフトチェンジのことで、現在40代半ばから50代の方が、シニア世代になっても
職場の戦力として活き活き働くためにはどうしたらよいかを自ら考え、今後の行動変容を促すための
研修です。

CSCのためのワークショップについてはこちら

『キャリア支援の視点から見る「中年の危機」』(第3回)

1.「中年」とは

この連載では、『キャリア支援の視点から見る「中年の危機」』を、企業/人事部門の観点から
紹介していきます。前回までの要点は、次の通りです。
☆この連載では、「中年」を45歳~54歳ぐらいの方とします。
☆中年期は人生の折り返し地点でもあり、職業人生の折り返し地点でもあります。ですから、
中年の場合の中長期視点として、定年・雇用延長というイベントは外せません。
定年・雇用延長と言う大きな節目を、中年期のうちから、しっかり考えておくことが大事です。

今回は、「40歳定年制」という考え方を説明します。

2.「40歳定年制」とは

「40歳定年制」は、2012年7月に、政府の国家戦略会議「フロンティア分科会」で東京大学大学院
教授の柳川範之氏が提言した施策です。

「40歳定年制」という言葉を初めて目にしたとき、「年金支給年齢が65歳に引き上げられるのに、
いや、もっと遅くなる可能性もあるのに、『40歳定年制』って、何をおかしなことを言っているんだ?」
と感じられた方も、多いのではないでしょうか。

≪40歳定年制≫
必ずしも一生を一つの会社で過ごすのではなく、環境や能力の変化に応じて20~40歳、
40~60歳、60~75歳と三つの期間でそれぞれに合った活躍できる働き場所を見つけ、
元気なうちは全ての国民が活き活きと働く社会となる。

「40歳定年制」という言葉が刺激的なため、この言葉を聞いた人は、それだけで否定的になって
しまうかもしれません。しかし、「40歳は、これからのキャリアを再構築する時期」くらいの感じで
捉えれば、納得がし易いかもしれません。75歳まで働く(働かなければならない?)ために、
「40歳定年制」を提言しているのです。

筆者が参加している、日本人材マネジメント協会(JSHRM)のリサーチプロジェクトでは、
「2段階定年制」を提案しています。

≪2段階定年制≫
企業は、従来の60歳定年(第2定年)に加えて、40歳代で第1定年を設定し、60歳定年の60歳まで
十分な時間があるうちに、これまでのキャリアを棚卸し、高齢期のキャリアについて考える機会を
提供し、充実した高齢期に向けて準備させる必要がある。つまり、2段階定年制は、自分で生きる
力をつけ、自分でキャリアを開発する出発点としての「自己発見型」定年制なのである。

「2段階定年制」は、「フロンティア分科会」の「40 歳定年制」と、似たような考え方ですが、
「キャリアの棚卸し」や「キャリアについて考える」という具体策が提案されています。

以前は、定年が55歳でした。その後、定年が60歳なり、現在は65歳迄働き続ける必要がでて
きました。働く年数が増えますが、同じ知識・技能で同一の仕事をこなせる期間は短くなってきて
います。こういう状況を考えると、企業人生の途中で、キャリアをチェンジするという発想は自然
だと思います。

「中年」になる45歳は「仕事人生の正午(折り返し地点)」であると言えます。ですから、「中年」に
なる少し前の40歳代前半に、「キャリアの棚卸し」をし、「中年」以降の働きかたを考えるのは
いいタイミングでしょう。「キャリアの棚卸し」をする際には、その方が社会人になった時代と、
現在の働き方・仕事の仕方、知識・技術、人事制度等、色々な状況・環境が変わっていると言うこと
を認識することが大事です。



3.人事部門が行うこと
企業の人事部門は、中年期に入った従業員に対し、「キャリアの棚卸し」をしてもらう機会を設定
しましょう。人事考課が悪い人、職位の低い人だけを対象にする企業がたまにありますが、
これは避けたほうがよいです。「キャリアの棚卸し」が、罰則のように思われてはその効果が
期待できません。一度、悪い評判がたってしまうと、それを取り戻すのは大変時間とパワーの
かかることです。人事部門は、そうならないようにしなければなりません。
人事部門には、40歳になった全従業員に「キャリアの棚卸し」を実施するというような制度を設ける
ことを推奨します。時間は、平等に流れるのですから、40歳の従業員の方は、皆、20年後、60歳に
なるのです。これは、職位が高かろうが低かろうが変わらないのです。
時間とお金はかかりますが、「キャリアの棚卸し」制度を定着させるには、これが一番いい方法だと
思います。

「キャリアの棚卸し」制度を実施する際には、「何のために、キャリアの棚卸しを実施するのか」を
きちんと説明することが大事です。40歳以降の仕事人生を、より納得いくものにしていただくために
、「キャリアの棚卸し」をするのだということを丁寧に説明しましょう。これを実施しないと「キャリアの
棚卸し」が「ただやっただけ」になってしまいます。
今回は、「中年」は仕事人生の中間地点であり、長い残りの仕事人生を充実するためには、一度
立ち止まり、「キャリアの棚卸し」をする大切さを説明しました。次回は、「キャリアの棚卸し」の仕方
について、具体的に説明します。
                                                      以上

※JSHRM(Japan Society for Human Resource Management:日本人材マネジメント協会)は、
「日本におけるHRMプロフェッショナリズムの確立」を使命に、我が国の人材マネジメントを担う
方々のための会員(年会費制)組織として2000年に設立されました。以来、日本を代表する
人材マネジメントの専門団体として、人材マネジメントに係る方々のための能力向上と
会員ネットワークを活かした情報交換・相互交流、更にグローバルな視点からの各種調査研究・
提言・出版などの諸活動を展開しています。


筆者プロフィール
泉田 洋一 氏(中央職業能力開発協会CSCスーパーバイザー)
学習院大学 理学部数学科卒
27年間、IT企業に勤務し、主に、人事、人材育成を担当。SEの新人/若手教育、選抜者研修/昇格者研修、キャリアデザイン研修(27歳、32歳、42歳、55歳)を担当。日本人材マネジメント協会会員。国家資格・1級・2級キャリアコンサルティング技能士。
メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅰ種合格。産業カウンセラー。

『キャリア支援の視点から見る「中年の危機」』(第2回)




中央職業能力開発協会のCSCスーパーバイザー泉田洋一氏が、中央職業能力開発協会のホームページ
「キャリア塾」に2016年7月より2016年12月まで6回にわたり連載された内容をご紹介します。

私(井上雅夫)も中央職業能力開発協会「CSCのためのワークショップ」の公認インストラクターです。
CSCとはキャリア・シフトチェンジのことで、現在40代半ばから50代の方が、シニア世代になっても
職場の戦力として活き活き働くためにはどうしたらよいかを自ら考え、今後の行動変容を促すための
研修です。

CSCのためのワークショップについてはこちら


『キャリア支援の視点から見る「中年の危機」』(第2回)


この連載では、『キャリア支援の視点から見る「中年の危機」』を、企業/人事部門の観点から紹介
して行きます。初回である前回は、キャリア理論上の「中年」の定義を説明しました。
前回の要点は、次の通りです。

この連載では、「中年」を45歳~54歳ぐらいの方とします。
心理学者ユングは、中年期は、人生の午前から、午後への移行期で、頂点を「人生の正午」と
呼びました。中年期は、人生の後半であり、(本人たちは認めたくはないでしょうが、)下降が
始まる時期ということになります。
キャリア研究者スーパーによると、中年期は、親、家庭人、配偶者、労働者、市民、余暇、学生、
子どもの役割が重複していることになります。つまり、中年は、それだけ多くの役割を担っている、
大変な時期ということになります。
中年期を迎えた多くの方々が、「これからの残りの人生(含む:職業人生)をどうしたらいいのか?
 このままでいいのだろうか? 変わるとすればどう変わっていったらいいのだろうか?」と
思い悩みます。
これを、中年期の危機といいます。

前回の内容から、中年期は、見た目以上にナイーブな時期であることがわかっていただけると
思います。
孔子は、「四十にして惑わず」と言ったそうですが、現在の中年は、迷うことばかりでしょう。
それが普通なのだと思います。今回からは、迷い事/悩みごとの多い中年の方へのキャリア支援
をするには、どのような視点が必要かを説明していきます。


1.キャリアの短期視点と中長期視点

キャリアを考えるには、短期視点だけでなく、中長期視点が必要です。人は、つい目の前の
ことばかりに捉われがちですが、中長期的なキャリアを考え、その後、短期的なキャリアを
考えていくことがよいと思われます。
中年期は人生の折り返し地点でもあり、職業人生の折り返し地点でもあります。ですから、
中年の場合の中長期視点として、定年というイベントは外せません。今は、定年延長後、
雇用延長として働く人が増えました。定年・雇用延長と言う大きな節目を、中年期のうちから、
しっかり考えておくことが大事です。
次に、定年・雇用延長に関する法律である「高年齢者雇用安定法」について簡単に説明します。



2.高年齢者雇用安定法

年金の支給年齢の引き上げに伴い、「高年齢者雇用安定法」が2006年に改訂されました。
要点は、次の通りです。
企業は、次のいずれか1つを選んで実施する義務があります。
  (1) 定年の引き上げ
  (2) 継続雇用制度の導入
  (3) 定年制の廃止

多くの企業は、「(2) 継続雇用制度の導入」を実施しています。
「高年齢者雇用安定法」は、2013年にさらに改訂されました。要点は、次の通りです。

(1) 対象者を限定できる仕組みの廃止
(2) 対象者を雇用する企業の範囲の拡大(グループ企業にまで拡大)


(1)の「対象者を限定できる仕組みの廃止」により、事業主は雇用延長を希望する方全員を、
雇用延長することになりました。勘違いされることが多いのですが、事業主には、雇用延長希望者
の希望通りの労働条件を用意する義務はありません。事業主には65歳までの安定した雇用を
確保する措置を義務付けているだけです。ですから、労働条件で折り合いがつかず、雇用継続に
至らないという場合もあることに注意する必要があります。
雇用延長を希望される方は、「雇用延長後も、今の仕事を続けたい」と希望される方が多いです。
これは、企業にとっても、再教育をせずに、雇用延長前の賃金より安く仕事をしてもらえるので
好都合です。
しかし、今、中年になったばかりの方々が雇用延長になるころには、現在従事している仕事がなく
なっている可能性があります。時代の要求や技術革新にともない、労働者に求められる仕事は
変化していきます。中年の方は、今、仕事ができているからと言って安心せず、時代に変化した
仕事に対応できるようになる必要があります。職業人生の折り返し地点を越しても、常に、
学び続ける姿勢は必要です。



3.これからの大きな変化

「同一労働同一賃金」という考え方が、最近話題になっています。これは、正規雇用/
非正規雇用かに関係なく、同一の労働をしたのならば、同一レベルの賃金を払うべきだとする
考えです。「同一労働同一賃金」を実現するには課題が多いですが、今の中年の方たちが
雇用延長になるころには、実現しているかもしれませんので考えておきましょう。
現在は、雇用延長になると、雇用延長前と同じ仕事をしていても、給料が半分ぐらいになることが
よくあります。しかし、「同一労働同一賃金」という考え方を実施すると、雇用延長前と同じレベル
の給料になります。では、企業はこの「同一労働同一賃金」に対応するのでしょうか? 
次のようなことが考えられます。

(1)雇用延長者の賃金を、雇用延長前の賃金と同じレベルにする。
(2)雇用延長者の業務内容を、雇用延長前の業務内容より、容易/責任の小さなものとして、
      賃金を下げる。
(3)雇用延長前の賃金を下げ、雇用延長後の賃金へのスムーズな移行をする。

現実的には、(1)よりも、(2)や(3)が多いと筆者は予想しています。(2)や(3)になった時の
ためにも、モチベーションをどう維持していくか、マネープランに影響はないかを、中年期から
検討しておくのがよいでしょう。
現在の中年の方が、雇用延長になるころは、今までSFの世界の話だった、ロボットやAI
(artificial intelligence:人工知能)により、仕事の仕方が変わっている可能性があります。
働き続けるのならば、常に、新しい技術を身につけたり、仕事の幅を広げていったりする必要が
あります。
このように、キャリアの中長期的視点を考える際には、外部環境の把握・予測が大事になって
きます。中年になった人は、雇用延長はまだまだ先だと考えているかもしれません。しかし、
避けられない大きな変化が、近くにあるということを認識していただきたいと思います。避けられ
ない大きな変化に対応していくには、自分の強みを伸ばして、エンプロイアビリティを確保していく、
自ら新しい仕事を求めていくしかないのです。
次回は、「40歳定年」という考え方を紹介します。
以上
筆者プロフィール
泉田 洋一 氏(中央職業能力開発協会CSCスーパーバイザー)
学習院大学 理学部数学科卒
27年間、IT企業に勤務し、主に、人事、人材育成を担当。SEの新人/若手教育、選抜者研修/昇格者研修、キャリアデザイン研修(27歳、32歳、42歳、55歳)を担当。日本人材マネジメント協会会員。国家資格・1級・2級キャリアコンサルティング技能士。
メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅰ種合格。産業カウンセラー。

『キャリア支援の視点から見る「中年の危機」』(第1回)



中央職業能力開発協会のCSCスーパーバイザー泉田洋一氏が、中央職業能力開発協会のホームページ
「キャリア塾」に2016年7月より2016年12月まで6回にわたり連載された内容をご紹介します。

私(井上雅夫)も中央職業能力開発協会「CSCのためのワークショップ」の公認インストラクターです。
CSCとはキャリア・シフトチェンジのことで、現在40代半ばから50代の方が、シニア世代になっても
職場の戦力として活き活き働くためにはどうしたらよいかを自ら考え、今後の行動変容を促すための
研修です。

CSCのためのワークショップについてはこちら

『キャリア支援の視点から見る「中年の危機」』(第1回)


今回から、きゃりあ道のコラム「キャリア塾」を担当する泉田洋一です。よろしくお願いします。
私は、27年間、IT企業で人事・人材育成を主に担当し、3年ほど前に退職し、現在は、
キャリアコンサルタントをしています。企業に勤務していた時には、新人研修、昇格者研修、
人事制度の策定、年代別キャリア研修の立ち上げなどを行いました。
また、日本人材マネジメント協会(JSHRM)※のリサーチプロジェクトでは、ライフキャリアチェーン
「ミドル編」に参加、検討していました。

6回の連載では、『キャリア支援の視点から見る「中年の危機」』を、企業/人事部門の観点から
紹介して行きたいと思います。今回は、連載の初回であるので、「中年」について、
イメージを共有していきたいと思います。


1.「中年」の定義

(1)「中年」の年齢的定義
「中年」というイメージは、人それぞれです。しかし、イメージが異なったままですと、この連載の
内容がぼけてしまうと思われますので、ここでは、45歳~54歳ぐらいの方を「中年」とすることに
します。これは、厚生労働省の一部資料が、45歳~54歳となっていることに合わせました。
しかし、「中年」を年齢と言う視点だけで見ていたのでは、中年の方への適切なキャリア支援を
行うことはできません。適切なキャリア支援を行うには、悩み、立場・役割、一般的な傾向等を
理解する必要があります。そのため、ここでは色々な視点から、中年像についてイメージを
共有化しておきたいと思います。


(2)キャリア理論上の「中年」
スイスの心理学者ユングは、人の一生涯を太陽の動きにたとえ、午前は人が上昇してく時期で、
頂点に達すると下降し始める時期だとしました(図1)。中年期は、人生の午前から、午後への
移行期で、頂点を「人生の正午」と呼びました。人生の正午は、人生の折り返し地点となります。
折り返し地点は、ゴールに向かって行くといういい意味で捉えることもありますが、死というゴール
が見えてくる時期でもあります。



アメリカのキャリア研究者、スーパー(Donald E Super)は、一生涯における、役割の始まりと
終わり、相互の重なり合いを「キャリアの虹(ライフ・キャリアレインボー)」(図2)で表しています。

<役割の意味>
親   :子どもから見た自分の役割です。
家庭人:家庭内の仕事をする役割です。
配偶者:夫もしくは妻の役割です。
労働者:仕事/労働をする役割です。
市民  :社会を構成する一員として、社会に貢献する役割です。
余暇   :余暇を趣味やレジャーで、楽しむ役割です。
学生   :学ぶ人という役割です。
子ども:親から見た自分の役割です。

ライフ・キャリアレインボーの図では、中年(「45歳~54歳ぐらい」)は、親、家庭人、配偶者、
労働者、市民、余暇、学生、子どもの役割が重複しています。つまり、中年は、それだけ多くの
役割を担っている、大変な時期ということになります。


2.「中年期の危機」とは
中年期を迎えた多くの方々が、「これからの残りの人生(含む:会社人生)をどうしたらいいのか?
 

このままでいいのだろうか? 変わるとすればどう変わっていったらいいのだろうか?」と思い悩み
ます。これが、「中年期の危機」といわれる状態です。これは、中年期を迎えた人の約8割もが
直面すると言われています。ここをうまく乗り切れないと、うつ病になってしまうこともあるので、
軽視できません。
今回は、キャリア理論から見た「中年」についてお話しました。このようなキャリア理論を学ぶ
ことは、キャリア支援についてとても重要ですが、「一般論的すぎる」、「日本人の中年と諸外国の
中年とは異なるのではないか?」とお感じの方もいらっしゃると思います。
次回からは、日本の「中年」の実態や、企業で働いている「中年」の悩みやその方々のキャリア
支援についてお話をしたいと思います。
                                                                                                                  以上


日本人材マネジメント協会(Japan Society for Human Resource Management =JSHRM)は、
「日本におけるHRMプロフェッショナリズムの確立」を使命に、我が国の人材マネジメントを担う
方々のための会員(年会費制)組織として2000年に設立されました。以来、日本を代表する
人材マネジメントの専門団体として、人材マネジメントに係る方々のための能力向上と会員
ネットワークを活かした情報交換・相互交流、更にグローバルな視点からの各種調査研究・提言・
出版などの諸活動を展開しています。


筆者プロフィール
泉田 洋一 氏(中央職業能力開発協会CSCスーパーバイザー)
学習院大学 理学部数学科卒
27年間、IT企業に勤務し、主に、人事、人材育成を担当。SEの新人/若手教育、選抜者研修/昇格者研修、キャリアデザイン研修(27歳、32歳、42歳、55歳)を担当。日本人材マネジメント協会会員。国家資格・1級・2級キャリアコンサルティング技能士。
メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅰ種合格。産業カウンセラー。