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6回の連載では、『キャリア支援の視点から見る「中年の危機」』を、企業/人事部門の観点から
紹介して行きたいと思います。今回は、連載の初回であるので、「中年」について、
イメージを共有していきたいと思います。
1.「中年」の定義
(1)「中年」の年齢的定義
「中年」というイメージは、人それぞれです。しかし、イメージが異なったままですと、この連載の
内容がぼけてしまうと思われますので、ここでは、45歳~54歳ぐらいの方を「中年」とすることに
します。これは、厚生労働省の一部資料が、45歳~54歳となっていることに合わせました。
しかし、「中年」を年齢と言う視点だけで見ていたのでは、中年の方への適切なキャリア支援を
行うことはできません。適切なキャリア支援を行うには、悩み、立場・役割、一般的な傾向等を
理解する必要があります。そのため、ここでは色々な視点から、中年像についてイメージを
共有化しておきたいと思います。
(2)キャリア理論上の「中年」
スイスの心理学者ユングは、人の一生涯を太陽の動きにたとえ、午前は人が上昇してく時期で、
頂点に達すると下降し始める時期だとしました(図1)。中年期は、人生の午前から、午後への
移行期で、頂点を「人生の正午」と呼びました。人生の正午は、人生の折り返し地点となります。
折り返し地点は、ゴールに向かって行くといういい意味で捉えることもありますが、死というゴール
が見えてくる時期でもあります。
アメリカのキャリア研究者、スーパー(Donald E Super)は、一生涯における、役割の始まりと
終わり、相互の重なり合いを「キャリアの虹(ライフ・キャリアレインボー)」(図2)で表しています。
<役割の意味>
親 :子どもから見た自分の役割です。 家庭人:家庭内の仕事をする役割です。 配偶者:夫もしくは妻の役割です。 労働者:仕事/労働をする役割です。 市民 :社会を構成する一員として、社会に貢献する役割です。 余暇 :余暇を趣味やレジャーで、楽しむ役割です。 学生 :学ぶ人という役割です。 子ども:親から見た自分の役割です。
ライフ・キャリアレインボーの図では、中年(「45歳~54歳ぐらい」)は、親、家庭人、配偶者、
労働者、市民、余暇、学生、子どもの役割が重複しています。つまり、中年は、それだけ多くの
役割を担っている、大変な時期ということになります。
2.「中年期の危機」とは
中年期を迎えた多くの方々が、「これからの残りの人生(含む:会社人生)をどうしたらいいのか?
このままでいいのだろうか? 変わるとすればどう変わっていったらいいのだろうか?」と思い悩み
ます。これが、「中年期の危機」といわれる状態です。これは、中年期を迎えた人の約8割もが
直面すると言われています。ここをうまく乗り切れないと、うつ病になってしまうこともあるので、
軽視できません。
今回は、キャリア理論から見た「中年」についてお話しました。このようなキャリア理論を学ぶ
ことは、キャリア支援についてとても重要ですが、「一般論的すぎる」、「日本人の中年と諸外国の
中年とは異なるのではないか?」とお感じの方もいらっしゃると思います。
次回からは、日本の「中年」の実態や、企業で働いている「中年」の悩みやその方々のキャリア
支援についてお話をしたいと思います。
以上
※日本人材マネジメント協会(Japan Society for Human Resource Management =JSHRM)は、
「日本におけるHRMプロフェッショナリズムの確立」を使命に、我が国の人材マネジメントを担う
方々のための会員(年会費制)組織として2000年に設立されました。以来、日本を代表する
人材マネジメントの専門団体として、人材マネジメントに係る方々のための能力向上と会員
ネットワークを活かした情報交換・相互交流、更にグローバルな視点からの各種調査研究・提言・
出版などの諸活動を展開しています。
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2017年1月27日金曜日
『キャリア支援の視点から見る「中年の危機」』(第1回)
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