国から労災保険の給付を受けながら療養中だった専修大元職員の40代の男性が、一定の補償金(打ち切り補償)を男性に支払っただけで同大が解雇したのは不当として、同大に労働者としての地位確認を求めた訴訟の差し戻し審判決が12日、東京高裁であった。河野清孝裁判長は「解雇権の乱用ではない」とし、原告側の訴えを退けた。
労働基準法は「使用者は業務上の傷病で療養中の労働者を原則、解雇できない」と規定。一方で「使用者が労働者に療養補償を行い、3年を経過しても治らなければ、平均賃金1200日分の打ち切り補償を支払い解雇できる」とも定めている。専修大は男性に療養補償をしていなかった。
1、2審は「療養補償せず解雇するのは違法だ」と判断。しかし最高裁は昨年6月、「労働者が労災保険を受給していれば、使用者は療養補償をしていなくても打ち切り補償を行い解雇できる」との初判断を示した。その上で「解雇の妥当性などの審理を尽くすべきだ」と高裁に差し戻した。
差し戻し審判決は最高裁の解釈を踏襲し、「労災保険は療養補償と実質的に同一だ」とし、解雇は正当だったと認定。その上で「打ち切り補償後の解雇でも、使用者が労働者の回復のための配慮を欠くなどした場合は解雇権の乱用となる場合はある」とも指摘した。
判決後、原告側は「労災で現在休職中の労働者が打ち切り補償後に簡単に切り捨てられてしまう恐れが出る不当判決だ」と述べた。
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