2016年7月16日土曜日

「無期転換ルール」がもたらすメリット

 平成25年に労働契約法が改正されました。

改正点のひとつとして、有期労働契約(1年、6カ月契約のパート、アルバイト、嘱託社員など)が
「繰り返し更新」されて「通算5年を超えた」ときは、「労働者の申込み」により、期間の定めのない労働契約に転換(以下「無期転換」と呼びます)できることになりました。

これまでも約3割の有期労働契約者が通算5年を超えて更新を繰り返す実態があり、その下で生じる労働者の「雇止めの不安」を解消し、働く人が「安心して働き続けることができる社会」を実現することが目的です。

この改正法は、平成25年4月1日に施行されたので、仮に施行日(平成25年4月1日)に契約(または更新)した労働者が継続して契約更新した場合、今から約2年後(平成30年4月1日)には、「無期転換」を申込む労働者が出ることが想定されます。ですから、事業主の皆様や労働者の皆様も、そろそろ準備をしたほうがいいかもしれません。(既に準備している事業主の皆様も多いと思いますが)

厚生労働省では「無期転換」の時期がくる前に、有期労働契約者が「雇止め」になる場合が増加するのではないかということを懸念しています。ですから、同省では「無期転換」ができるだけ円滑に進むよう、労使双方に「無期転換後の労働条件のあり方について、労使であらかじめよく話し合い、就業規則や労働契約書などに規定しておく」ことを呼びかけています。

中小企業の事業主の皆様のなかには「無期転換」についてネガティブなイメージをお持ちになっている方もいらっしゃると思います。ですが、中小企業が「良い人財」を確保することが難しい現状のなかで、「無期転換」がもたらすメリットも大きいと思います。

例えば、
安定雇用が見込まれ、必要な人財を確保し続けることができる
②会社への忠誠心が増し、労働者の意欲が増し、更なる能力向上が期待できる
③新規採用や教育訓練に係る費用や時間を減少させることができる
などがメリットとして考えられます。

さらに「無期転換」し「キャリアアップ等の促進」の取組を実施した事業主に対して「助成金」を支給する制度もあります。

いくつか例を挙げると、
①有期契約労働者等の正規雇用労働者・多様な正社員等への転換等の助成金
 (最高60万円/人)
②有期契約労働者等に対する職業訓練の助成金
 (最高50万円/人)
③有期契約労働者等の賃金テーブルの改善、健康診断制度の導入、短時間労働者の週所定労働時間を社会保険が加入できるよう延長することの助成金
 (最高300万円)

事業主の「無期転換」へ移行する手順については、
以下の3つのステップが、厚生労働省から提案されています。

【ステップ1】現場における有期契約労働者の活用実態を把握する

>有期労働契約者の人数、社内規定、運用実態、業務内容、今後の働き方やキャリアに関する希望等について把握します。

【ステップ2】有期契約労働者の活用方針を明確化し、「無期転換」への対応の方向性を検討する

ひとつの例をあげれば、

>「恒常的な基幹業務」を担当している有期労働契約している人は、「無期転換」を前提に契約し、
「恒常的な補助業務」を担当している方は、業務量、意欲、能力、働き方の希望を考慮し、長期勤続が見込まれる人については「無期転換」について話し合って納得する契約をし、また、「スポット的業務(短期、季節性)」については、5年以内になるよう、期間に合わせた適正な契約期間とする
などが考えられます。

【ステップ3】「無期転換」後の労働条件をどのように設定するか検討する

例えば、以下の3つのパターンの労働条件にすることが考えられます。

1)有期契約労働者を「無期契約労働者」に転換する場合は、契約期間が無期になるが、労働条件は有期契約労働契約時と同一とする

2)有期契約労働者を「多様な正社員区分(職務限定社員、エリア限定社員)」に転換する場合は、職務の範囲や勤務地の限定などを勘案した労働条件を適用する

3)有期契約労働者を「正社員」に転換する場合は、既存の正社員区分の労働条件を適用する

これらを自社の状況に応じて、組み合わせ、段階的に転換していくこともできます。

なお、平成27年4月1日に「専門的知識を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法」が施行され、 

1)高度な専門的知識等を有する有期契約労働者が 
2)定年後引続き雇用される場合、
3)適切な雇用管理に関する計画を作成し、都道府県労働局長の認定されたときは、
一定の期間については、「無機転換」申込権が発生しない、という特例が設けられています。

いずれにしても、「無期転換ルール」が実際に始まる時期が近づいています。
会社の人財確保と活用のためにも、労働者の雇用の安定と不安解消のためにも、円滑に仕組みが導入されることが望まれていると思います。

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