派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針の一部を改正する件関係
● 労働者派遣契約の締結に当たって講ずべき措置に以下の項目を追加することとされた。
・派遣元事業主は、労働者派遣契約の締結に当たって、派遣先が労働者派遣の終了後に派遣労働者を雇用する意思がある場合には、当該意思を事前に派遣元事業主に示すこと、派遣元事業主が職業紹介を行うことができる場合には、派遣先は職業紹介により当該派遣労働者を雇用し、派遣元事業主に当該職業紹介に係る手数料を支払うこと等を定めるよう求めること。
● 労働者派遣契約の終了に当たって講ずべき事項を以下のとおり定めることとされた。
・派遣元事業主は、無期雇用派遣労働者の雇用の安定に留意し、労働者派遣が終了した場合において、労働者派遣の終了のみを理由として当該労働者派遣契約に係る無期雇用派遣労働者を解雇してはならないこと。
・派遣元事業主は、有期雇用派遣労働者の雇用の安定に留意し、労働者派遣契約の期間が終了した場合であって、当該労働者派遣契約に係る有期雇用派遣労働者との労働契約が継続しているときは、当該労働者派遣の終了のみを理由として当該有期雇用派遣労働者を解雇してはならないこと。
● 派遣先との連絡体制の確立について以下のとおりとすることとされた。
・派遣元事業主は、派遣労働者の就業の状況が労働者派遣契約の定めに反していないことの確認等を行うとともに、派遣労働者の適正な派遣就業の確保のために、情報提供を行う等により、派遣先との連絡調整を的確に行うこと。特に、労働基準法第36条第1項の時間外及び休日の労働に関する協定の内容等派遣労働者の労働時間の枠組みについては、情報提供を行う等により、派遣先との連絡調整を的確に行うこと。なお、協定の締結に当たり、労働者の過半数を代表する者の選出を行う場合には、労働基準法施行規則第6条の2の規定を踏まえ、適正に行うこと。
また、派遣元事業主は、割増賃金等の計算に当たり、その雇用する派遣労働者の実際の労働時間等について、派遣先に情報提供を求めること。
● 派遣労働者の雇用の安定及び福祉の増進等について以下のとおりとすることとされた。
1 無期雇用派遣労働者について留意すべき事項
・派遣元事業主は、無期雇用派遣労働者の募集に当たっては、無期雇用派遣労働者の募集であることを明示しなければならないこと。
2 特定有期雇用派遣労働者等について留意すべき事項
・派遣元事業主が、労働者派遣法第30条第2項の規定の適用を避けるために、業務上の必要性等なく同一の派遣労働者に係る派遣先の事業所その他派遣就業の場所における同一の組織単位の業務に係る労働者派遣の期間を3年未満とすることは、同項の趣旨に反する脱法的な運用であって、義務違反と同視できるものであり、厳に避けるべきものであること。
・派遣元事業主は、労働者派遣法第30条第1項(同条第2項の規定により読み替えて適用する場合を含む。以下同じ。)の措置(以下「雇用安定措置」という。)を講ずるに当たっては、当該措置の対象となる特定有期雇用派遣労働者等に対し、キャリア・コンサルティングや労働契約の更新の際の面談等の機会を利用し、又は電子メールを活用する等により、労働者派遣の終了後に継続して就業することの希望の有無及び希望する措置の内容を把握すること。
・派遣元事業主は、雇用安定措置を講ずるに当たっては、当該措置の対象となる特定有期雇用派遣労働者等の希望する措置を講ずるよう努めること。また、特定有期雇用派遣労働者が、同項第1号の措置を希望する場合には、派遣先での直接雇用が実現するよう努めること。
・派遣元事業主は、雇用安定措置を講ずるに当たっては、早期に対象となる特定有期雇用派遣労働者等の希望する措置の内容について聴取を行い、十分な時間的余裕をもって当該措置に着手すること。
3 労働契約法の適用について留意すべき事項
・派遣元事業主は、派遣労働者についても労働契約法の適用があることに留意すること。
・派遣元事業主が、その雇用する有期雇用派遣労働者について、当該有期雇用派遣労働者からの労働契約法第18条第1項の規定による期間の定めのない労働契約の締結の申込みを妨げるために、当該有期雇用派遣労働者に係る期間の定めのある労働契約の更新を拒否し、また空白期間を設けることは、脱法的な運用であること。
・有期雇用派遣労働者の通勤手当に係る労働条件が、期間の定めがあることにより同一の派遣元事業主と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の通勤手当に係る労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して不合理と認められるものであってはならないこと。
4 派遣労働者等の適性、能力、経験、希望等に適合する就業機会の確保等派遣元事業主は、派遣労働者又は派遣労働者になろうとする者(以下「派遣労働者等」という。)について、最も適合した就業の機会の確保を図るとともに、就業する期間及び日、就業時間、就業場所、派遣先における就業環境等について当該派遣労働者等の希望と適合するような就業機会を確保するよう努めなければならないこと。また、派遣元事業主は、労働者派遣法第30条の2の教育訓練等の措置を講じなければならないほか、就業機会と密接に関連する教育訓練の機会を確保するよう努めなければならないこと。
5 派遣労働者のキャリアアップ措置
・派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者に対し、労働者派遣法第30条の2第1項の教育訓練を実施するに当たっては、教育訓練計画に基づく教育訓練を行わなければならないこと。
・派遣元事業主は、派遣労働者として雇用しようとする労働者に対し、労働契約の締結時までに教育訓練計画を周知するよう努めること。また、当該教育訓練計画に変更があった場合は、その雇用する派遣労働者に対し、速やかにこれを周知するよう努めること。
・派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者が教育訓練計画に基づく教育訓練を受けられるよう配慮しなければならないこと。特に、教育訓練計画の策定に当たっては、教育訓練の複数の受講機会を設け、又は開催日時や時間の設定について配慮する等により、可能な限り派遣労働者が受講しやすいようにすることが望ましいこと。
・派遣元事業主は、教育訓練計画に基づく教育訓練を実施するのみならず、更なる教育訓練を自主的に実施するとともに、当該教育訓練に係る派遣労働者の負担は実費程度とすることで、派遣労働者が受講しやすいようにすることが望ましいこと。
・派遣元事業主は、教育訓練を行った日時及び内容、労働者派遣の期間、その従事した業務の種類等を記載した書類を保存するよう努めること。
6 派遣先の労働者との均衡に配慮した取扱い
・派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者の賃金の決定に当たっては、当該派遣労働者の従事する業務と同種の業務に従事する派遣先に雇用される労働者の賃金水準との均衡を考慮しつつ、当該派遣労働者の従事する業務と同種の業務に従事する一般の労働者の賃金水準又は当該派遣労働者の職務の内容、能力若しくは経験等を勘案するよう努めること。また、派遣元事業主は、派遣労働者の職務の成果、意欲等を適切に把握し、当該職務の成果等に応じた適切な賃金を決定するよう努めること。
・派遣労働者の従事する業務と同種の業務に従事する派遣先に雇用される労働者の賃金水準との均衡を考慮した結果のみをもって、当該派遣労働者の賃金を従前より引き下げるような取扱いは、労働者派遣法第30条の3第1項の趣旨を踏まえた対応とはいえないこと。
・派遣元事業主は、労働者派遣に関する料金の額に係る派遣先との交渉が当該労働者派遣契約に係る派遣労働者の待遇の改善にとって極めて重要であることを踏まえつつ、当該交渉に当たるよう努めること。
・派遣元事業主は、労働者派遣に関する料金の額が引き上げられた場合には、可能な限り、当該労働者派遣に係る派遣労働者の賃金を引き上げるよう努めること。
・派遣元事業主は、労働者派遣に係る業務を円滑に遂行する上で有用な物品の貸与や教育訓練の実施等を始めとする派遣労働者の福利厚生等の措置について、当該派遣労働者の従事する業務と同種の業務に従事する派遣先に雇用される労働者の福利厚生等の実状を把握し、当該派遣先に雇用される労働者との均衡に配慮して必要な措置を講ずるよう努めること。
・派遣元事業主は、派遣労働者が労働者派遣法第31条の2第2項の規定に基づき説明を求めたことを理由として、不利益な取扱いをしてはならないこと。
7 同一の組織単位の業務への派遣
派遣元事業主が、派遣先の事業所等における組織単位の業務について継続して3年間同一の派遣労働者に係る労働者派遣を行った場合において、当該派遣労働者が希望していないにもかかわらず、当該労働者派遣の終了後3月が経過した後に、当該派遣先の同一の組織単位の業務に再度当該派遣労働者を派遣することは、派遣労働者のキャリアアップの観点から望ましくないこと。
● 情報の提供について以下を追加することとされた。
マージン率の情報提供に当たっては、常時インターネットの利用により広く関係者、とりわけ派遣労働者に必要な情報を提供することを原則とすること。また、労働者派遣の期間の区分ごとの雇用安定措置を講じた人数等の実績及び教育訓練計画については、インターネットの利用その他の適切な方法により関係者に情報提供することが望ましいこと。
● 派遣労働者の安全衛生について派遣元事業主と派遣先が密接に連携することについて定めることとされた。
● その他所要の規定の整備を行うこととされた。
4 派遣先が講ずべき措置に関する指針の一部を改正する件関係
● 労働者派遣契約の終了後の直接雇用に関する事項を以下のとおり定めることとされた。
派遣先は、派遣元事業主の求めに応じ、労働者派遣の終了後に派遣労働者を雇用する意思がある場合には、当該意思を事前に派遣元事業主に示すこと、派遣元事業主が職業紹介を行うことができる場合には、職業紹介により当該派遣労働者を雇用し、派遣元事業主に当該職業紹介に係る手数料を支払うこと等の措置を労働者派遣契約に定め、当該措置を適切に講ずること。
● 適切な苦情の処理について以下のとおりとすることとされた。
・派遣先が適切かつ迅速な処理を図るべき苦情には、セクシュアルハラスメント、パワーハラスメント等が含まれることに留意すること。
・派遣先は、派遣労働者の苦情の処理を行うに際しては、派遣先の労働組合法上の使用者性に関する代表的な裁判例や中央労働委員会の命令に留意すること。また、派遣先は、派遣元事業主との連携を図るための体制等を労働者派遣契約において定めるとともに、派遣労働者の受入れに際し、その内容を派遣労働者に説明すること。さらに、派遣先管理台帳に苦情の申出を受けた年月日、苦情の内容及び苦情の処理状況について、苦情の申出を受け、及び苦情の処理に当たった都度、記載するとともに、その内容を派遣元事業主に通知すること。また、派遣労働者から苦情の申出を受けたことを理由として、当該派遣労働者に対して不利益な取扱いをしてはならないこと。
● 労働者派遣に関する料金の額を以下のとおり定めることとされた。
派遣先は、労働者派遣に関する料金の額の決定に当たっては、当該派遣労働者の賃金水準が、当該派遣労働者の従事する業務と同種の業務に従事している労働者の賃金水準と均衡が図られたものとなるよう努めなければならないこと。また、派遣先は、労働者派遣契約の更新の際の労働者派遣に関する料金の額の決定に当たっては、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者の就業の実態及び労働市場の現状に加え、当該派遣労働者が従事する業務の内容、当該業務に伴う責任の程度、当該派遣労働者に要求する技術水準の変化を勘案するよう努めなければならないこと。
● 教育訓練・能力開発について以下のとおりとすることとされた。
派遣先は、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者に対して労働者派遣法第40条第2項の教育訓練を実施するよう配慮するほか、派遣元事業主が労働者派遣法第30条の2第1項の教育訓練を実施するに当たり、派遣元事業主から求めがあったときは、派遣元事業主と協議等を行い、派遣労働者が当該教育訓練を受けられるよう可能な限り協力するほか、必要に応じた当該教育訓練に係る便宜を図るよう努めなければならないこと。派遣元事業主が行うその他の教育訓練、派遣労働者の自主的な能力開発等についても同様とすること。
● 派遣元事業主との労働時間等に係る連絡体制の確立に以下の内容を追加することとされた。
派遣先は、適正に把握した実際の労働時間等について、派遣元事業主に正確に情報提供すること。
● 労働者派遣の役務の提供を受ける期間の制限の適切な運用について以下のとおりとすることとされた。
派遣先は、労働者派遣法第40条の2及び第40条の3の規定に基づき派遣労働者による常用労働者の代替の防止と派遣就業を望まない派遣労働者が派遣就業に固定化されることの防止を図るため、次に掲げる基準に従い、事業所等ごとの業務について、派遣元事業主から労働者派遣法第40条の2第2項の派遣可能期間を超える期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けてはならず、また、事業所等における組織単位ごとの業務について、派遣元事業主から3年を超える期間継続して同一の派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を受けてはならないこと。
・事業所等については、工場、事業所、店舗等、場所的に他の事業所その他の場所から独立していること、経営の単位として人事、経理、指導監督、労働の態様等においてある程度の独立性を有すること、一定期間継続し、施設としての持続性を有すること等の観点から実態に即して判断すること。
・事業所等における組織単位については、労働者派遣法第40条の3の期間制限の目的が、派遣労働者がその組織単位の業務に長期間にわたって従事することによって派遣就業を望まない派遣労働者が派遣就業に固定化されることを防止することにあることに留意しつつ判断すること。すなわち、課、グループ等の業務としての類似性や関連性がある組織であり、かつ、その組織の長が業務の配分や労務管理上の指揮監督権限を有するものであって、派遣先における組織の最小単位よりも一般に大きな単位を想定しており、名称にとらわれることなく実態により判断すべきものであること。ただし、小規模の事業所等においては、組織単位と組織の最小単位が一致する場合もあることに留意すること。
・派遣先は、労働者派遣の役務の提供を受けた当該派遣先の事業所等ごとの業務について、新たに労働者派遣の役務の提供を受ける場合には、当該新たな労働者派遣の開始と当該新たな労働者派遣の役務の受入れの直前に受け入れていた労働者派遣の終了との間の期間が3月を超えない場合には、当該派遣先は、当該新たな労働者派遣の役務の受入れの直前に受け入れていた労働者派遣から継続して労働者派遣の役務の提供を受けているものとみなすこと。
・派遣先は、労働者派遣の役務の提供を受けていた当該派遣先の事業所等における組織単位ごとの業務について同一の派遣労働者に係る新たな労働者派遣の役務の提供を受ける場合には、当該新たな労働者派遣の開始と当該新たな労働者派遣の役務の受入れの直前に受け入れていた労働者派遣の終了との間の期間が3月を超えない場合には、当該派遣先は、当該新たな労働者派遣の役務の受入れの直前に受け入れていた労働者派遣から継続して労働者派遣の役務の提供を受けているものとみなすこと。
・派遣先は、当該派遣先の事業所等ごとの業務について派遣元事業主から3年を超えて期間労働者派遣の役務の提供を受けようとする場合において、労働者派遣法第40条の2第3項の規定による派遣可能期間の延長に係る手続を回避することを目的として、当該労働者派遣の終了後3月が経過した後に再度当該労働者派遣の役務の提供を受けるような、実質的に派遣労働者の受入れを継続する行為は、同項の趣旨に反するものであること。
● 派遣可能期間の延長に係る意見聴取の適切かつ確実な実施について以下のとおりとすることとされた。
・派遣先は、当該派遣先の事業所等の過半数労働組合等に対し、派遣可能期間を延長しようとする際に意見を聴くに当たっては、派遣先の事業所等の業務について、意見聴取の際に過半数労働組合等が意見を述べるに当たり参考となる資料を過半数労働組合等に提供するものとすること。また、派遣先は、意見聴取の実効性を高める観点から、過半数労働組合等からの求めに応じ、部署ごとの派遣労働者の数等に係る情報を提供することが望ましいこと。
・派遣先は、過半数労働組合等に対し意見を聴くに当たっては、十分な考慮期間を設けること。
・派遣先は、派遣可能期間を延長することに対して過半数労働組合等から異議があった場合には、当該意見に関する対応を説明するに際し、当該意見を勘案して派遣可能期間の延長について再検討を加える等により、過半数労働組合等の意見を十分に尊重するよう努めること。
・派遣先は、派遣可能期間を延長する際に過半数労働組合等から異議があった場合において、当該延長に係る期間が経過した場合にこれを更に延長しようとするに当たり、再度、過半数労働組合等から異議があったときは、当該意見を十分に尊重し、当該派遣可能期間の延長の中止又は当該延長する期間の短縮、受入れ人数の減少等の対応方針を採ることについて検討し、その結論をより一層丁寧に過半数労働組合等に説明しなければならないこと。
・派遣先は、派遣可能期間を延長しようとする場合の過半数労働組合等からの意見の聴取及び過半数労働組合等が異議を述べた場合の当該過半数労働組合等に対する派遣可能期間の延長の理由等の説明を行うに当たっては、誠実にこれらを行うよう努めなければならないものとすること。
● 派遣労働者の安全衛生について派遣元事業主と派遣先が密接に連携することについて定めることとされた。
● その他所要の規定の整備を行うこととされた。
〔参考〕その他、本日(9月29日)付けの官報に、次のような告示も公布され、必要な事項が定められた。
〇労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則第1条の4第1号の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準を定める件(平成27年厚生労働省告示第391号)
〇労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則第29条の2の規定に基づき厚生労働大臣が定める講習を定める件(平成27年厚生労働省告示第392号)
〇労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律の施行に伴う厚生労働省関係告示の整理に関する告示を定める件(平成27年厚生労働省告示第395号)
これらの政省令等は、労働契約申込みみなし制度に関する規定を除き、
平成27年9月30日から施行される
(労働契約申込みみなし制度に関する規定は、
平成27年10月1日から施行される)
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