2017年5月19日金曜日

公契約だけでなく会社の健康増進にも役立つ労働条件審査

労働条件審査とは

その企業における労務管理の実態を、労働基準法などの労働法令や通達・判例に照らして総合的・網羅的に精査し、コンプライアンス(法令順守・社会的責任)を確認する手続きのことです。
これによって判明した違法な部分を早急に是正し、不安のある部分を改善することによって、良い企業、強い企業を目指します。

会社の健康診断

私たちは定期的に健康診断を受けています。この健康診断によって、病気が治るわけではありません。
しかし、病気を発見し早期治療を可能にしますし、不安な部分について生活習慣を改善し病気の予防に努めることができます。
労働条件審査は、まさに会社の健康診断です。


今だからこそ必要な理由

人手不足が深刻な今、優秀な人材の確保は企業にとって最大の課題です。
好ましい人材の採用にも、失いたくない人材の定着にも、職場の適法性・社会性・環境が大きく影響します。
セクハラ、パワハラ、メンタルヘルス障害などの危険が大きな企業では人材が確保できません。
労使トラブルも急増しています。個々の労働者が手軽に情報を得て、権利を主張するようになりました。
不当解雇、未払い残業代、雇用契約の不更新に対する損害賠償の請求も手軽にできるようになっています。これらには多額の慰謝料も含まれます。
世間一般から、企業のコンプライアンス(法令順守・社会的責任)が問われる時代になりました。
マスコミは、企業の労使トラブルを大々的に取り上げますし、厚生労働省も平成29年5月10日から労働法違反のあった企業名を公表するようになりました。
こうした形で企業名が世間にさらされると、取引先や顧客が離れていき、企業の死活問題ともなりかねないのです。
今まさに、企業が足元をすくわれないようにするため、労働条件審査が必要となっています。

労働条件審査の内容

労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法、高年齢者雇用安定法、育児・介護休業法、パート労働法、健康保険法、厚生年金保険法、雇用保険法、労災保険法など関連法令との整合性について、社内規定類の書類調査、職場調査、聞き取り調査などを行い、経営者の方や総務・人事部門の方々と打合せを行って、労働条件審査報告書を作成いたします。
これに、具体的な是正案・改善案が加わりますので、会社の健康増進にもすぐ活用できる内容となっています。

お問い合わせ先

公契約のための労働条件審査であれば、各都道府県の社会保険労務士会へのお問合せをお勧めします。
これ以外の労働条件審査は、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください

2017年5月14日日曜日

遺言と相続そして成年後見セミナー開催の件

 2017年5月13日 団塊社労士Mが「遺言と相続そして成年後見セミナー」の講師を勤めました。当日は雨にもかかわらず、35名の方に参加いただき、セミナー終了後には個別相談も行いました。

セミナーの模様はこちら

自民党 一億総活躍推進本部が提言をとりまとめ


 自民党は、一億総活躍推進本部がとりまとめた「一億総活躍社会の構築に向けた提言」を公表しました。これは、同本部に置かれた6つのプロジェクトチームの提言を取りまとめたものとなっています。
●65歳以上のシニアの働き方・選択の自由度改革に関する提言
 「定年の引上げ(まず、公務員の定年を65歳に)」、「年金の支給開始年齢の後ろ倒しを可能にする(71歳以降からの受給開始を選択できるようにする)」などを提言
●誰もが活躍する社会に関する提言
 「留学生の就労時間延長(マイナンバーを活用して就労(資格外活動)実態の管理を徹底した上で、上限時間(現行は週28時間)を緩和)」を提言
 65歳以上のシニアの働き方・選択の自由度改革に関する提言においては、「65歳までは完全現役」、「70歳まではほぼ現役」とし、75歳までは可能な限り支え手に回ってもらえるようにする、といった考え方も示されています。
 そのこともあって、今回の年金の支給開始年齢に関する提言は、結局のところ、年金の原則的な支給開始年齢(現行65歳)の引き上げの布石ではないか、といった声も上がっています。
 
詳しくは、こちらをご覧ください。
<一億総活躍社会の構築に向けた提言>
https://jimin.ncss.nifty.com/pdf/news/policy/134900_1.pdf

厚労省 違法残業等で書類送検の企業名の公表を開始


 『過労死等ゼロ』緊急対策」による取組みの一つとして、労働基準関係法令違反で書類送検を行った企業の名称などを厚生労働省のホームページ上で公表することが決定され、その基準を示す通達が発出されていました。
 今月10日、その公表が開始されました。
 公表される項目は、
①企業・事業場名称、②所在地、③公表日、➃違反法条項、⑤事案概要、⑥その他参考事項(送検日)で、各都道府県労働局ごとに、公表基準に該当した企業が列挙されています。
 今回掲載されたのは、昨年10月から今年3月までに公表基準に該当した334件となっています。
 労働基準法違反に限らず、最低賃金法違反、労働者派遣法違反、さらには労働安全衛生法違反なども公表の対象とされており、違法な長時間労働・残業代未払いなどの事案は約120件公表されています(ちなみに、建設業や製造業などにおける労働災害防止の義務を怠っていた事案は200件を超えています)。
 公表の基準によると、掲載期間は、公表日から概ね1年間(期間中に違法状態を改善した企業は期間前に削除されることもある)で、今後は、毎月定期に更新されることになっています。
 公表が開始されたことは、報道機関も取り上げており、世間の注目度も高いです。
 「企業の法令違反に対する意識の改善につなげたい」というのが厚生労働省の狙いですが、確かに、公表されるダメージを考えると、法令遵守を意識した方が得策といえそうですね。

 詳しくは、こちらをご覧ください。
<労働基準関係法令違反に係る公表事案>
http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/dl/170510-01.pdf
<【参考】公表事案のホームページ掲載の基準>
http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/dl/170510-02.pdf

2017年5月5日金曜日

「仕事と介護の両立支援」制度が御社を救う③!

~所定労働時間の短縮措置等制度他編

前回は、改正された介護休業制度についてお話しました。
これは、法律に定められた従業員の権利であり、従業員から申し出があった時には、介護休業を取らせなければなりません。
しかし、法律で定められている制度はこれだけではありません。

所定労働時間の短縮措置等

今回の育児・介護休業法の改正で、介護休業とは別に、所定労働時間の短縮等の利用ができるようになりました。
ただし、これは事業主の選択的措置義務といわれるもので、会社は次の4つのうちの1つの制度を導入すればOKです。

1.所定労働時間の短縮
2.フレックスタイム制
3.始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げ
4.労働者が利用する介護サービス費用の助成等

会社は上記4つの制度のうち、どれか1つ以上を選んで制度導入しなければなりません。
しかも、制度の利用開始から3年間のうちで2回以上利用できるようにしなければいけません。
どの制度を導入するかは会社に決定権があります。
しかし、その決定した制度の利用を従業員が申し出たなら、会社は断ることができません。
ですから、例えば、会社が「短時間勤務」を導入した場合、「短時間勤務」を1年間申し出て、その後「介護休業」を2ヶ月とって、さらにまた、「短時間勤務」を1年10ヶ月続けるなんてこともできます。
また、3年間ずっと「短時間勤務」なんてことも可能です。
会社にとっては、かなりの負担になるかもしれません。

しかし、従業員の「仕事と介護の両立支援」という面では有効な制度です。
大切な人材が会社を辞めていく介護離職を防ぐのに、効果があると思います。

法改正に伴った就業規則の変更をできるだけ速やかに進め、さらにその内容を従業員に周知することで、潜在的な介護離職者の離職を未然に防ぎましょう。
この制度導入を機に、全社的な「労働時間の短縮」「長時間労働の解消」に乗り出しては如何でしょうか?

長時間労働の解消は、「仕事と介護の両立」だけでなく、

「仕事と育児の両立」
「ワーク・ライフ・バランス」
「女性活躍」
「パワハラ防止」
「マタハラ防止」等々、

最近流行りのキーワードに有効な処方です。

残業免除制度

次に、残業免除制度についてお話します。
この制度は、今回の法改正で新たにできた制度です。
育児については同様の制度があったのですが、今回、介護についても残業免除制度ができました。
この「介護のための残業免除制度」は、介護が終了するまでの間、従業員が申し出れば、会社は残業をさせることができません。
「事業の正常な運営を妨げる場合には請求を拒否できる」ことになっているので、この文言を理由に、この制度を利用させない事業主も出てきそうです。
しかし、これは、通常考えられる相当な努力を行っても、事業運営に重大な支障が出ることが、客観的に証明できる場合です。
その従業員の担当する作業の内容、作業の繁閑、代替要員の配置の難易などの事情を考慮して客観的に判断することとなります。
通常の「忙しい」とか「今は繁忙期だから」というような理由で制度利用を制限するのは難しいと考えておいたほうがよいでしょう。
従業員の希望通りに制度利用させるのが基本だと思ってください。

介護休暇制度

さらに、「介護休暇」が1年に5日取れるのですが、この「介護休暇」を「半日単位」で取れるようになります。

時間外労働・深夜業制限制度

ついでにお話しておくと、今回の改正事項ではありませんが、介護を行っている従業員が申し出た場合には、
1.残業を「1ヶ月24時間以内」に抑えなければなりません。
2.深夜(PM10:00~AM5:00)に働かせることもできません。

就業規則への明記は必須

以上のような介護に関する法改正によって、「仕事と介護の両立」が少しはやり易くなるのではないでしょうか?
介護離職者は年間10万人弱、そのうち2割は男性です。
40代・50代の重要ポストに就いている従業員の介護離職が御社に与えるインパクトを考えてみてください。
何としてでも介護離職を食い止め人材の流出を防ぐことは、これからの御社の経営課題の1つではないでしょうか?
早め早めの手立てを打って、御社の労務リスクの軽減を図っていきましょう。

なお、今回お話した制度については、制度利用が除外される従業員もいます。

その辺りのことも含めて、就業規則にしっかりと明記しておくことで、従業員との無用なトラブルを防ぐことができます。

介護に関する制度は多岐にわたり、また、適用除外者等もあるのでかなり複雑です。
詳しいことは、専門家である我々社会保険労務士にお尋ねいただくのが良いと思います。

2017年5月3日水曜日

厚労省 年度更新申告書計算支援ツールを公表


本年度も、労働保険の年度更新の時期が近づいてきました(6月1日から7月10日までの間)。
厚生労働省は、今月2日、平成29年度の年度更新に向けて、「年度更新申告書計算支援ツール」を公表しました。
このツールは、各事業において、「労働保険 概算・確定保険料 石綿健康被害救済法一般拠出金申告書」の計算を行う際の参考となるよう、作成されたものです。
詳しくは、こちらをご覧ください(Excelのデータとなります)。
<年度更新申告書計算支援ツール>
・年度更新申告書計算支援ツール(継続事業用) Excel2010
・年度更新申告書計算支援ツール(継続事業用:雇用) Excel2010
・年度更新申告書計算支援ツール(建設事業用) Excel2010
※厚生労働省からの注意事項→本ツールの使用にあたっては、必ず事前に「利用方法・注意事項(必ずお読みください)」をご一読いただき、これらの内容について同意されない場合には使用をご遠慮ください。

2017年5月1日月曜日

平成29年度厚生労働省職業能力開発助成金施策について



  本年度の職業能力開発助成金については、特に人材開発支援助成金(旧キャリア形成促進助成金)に関し、企業内における人材育成を引き続き効果的に推進し、労働生産性の向上に資する訓練に重点化する観点から、訓練効果が高く、労働生産性の向上に資する訓練については高率助成とし、また、活用いただく事業主の皆様にとって、より分かりやすく使いやすい利便性の高い制度とするため、助成メニューを整理再編いたしました。

主な変更内容について以下ご紹介させていただきます。

従来の各訓練コースについて、一定の要件を満たす雇用型訓練、若年労働者への訓練、熟練技能者による技能承継のための訓練に加え、労働生産性の向上に直結する訓練を特定訓練コースとして整理いたしました。また、特定訓練コース以外のその他一般的な訓練を一般訓練コースとし、2つのコースに大括り化いたしました。さらに、訓練コースと同様に従来の制度導入コースについても見直しを行いました。具体的には教育訓練・職業能力評価制度の導入に対する助成を廃止し、キャリア形成支援制度導入コース(セルフ・キャリアドック制度、教育訓練休暇等制度)と、職業能力検定制度導入コース(技能検定合格報奨金制度、社内検定制度または業界検定制度)と大括り化し、計4コースに再編いたしました。
労働生産性の向上に資する訓練の実施を促進するため、特定訓練コースについては、助成対象訓練時間の下限を20時間以上から10時間以上に緩和しました。
企業が労働生産性を高めていくことに対するインセンティブを付与するため、労働生産性に係る一定の要件を満たした場合に助成率・助成額を引き上げることとしました。
新たに特定訓練コースに労働生産性向上訓練を位置づけたことなどから、特定訓練コースを含む訓練を実施する事業主については、1年度に受給できる限度額を引き上げました。(500万円→1000万円)
この他、従来の重点訓練コースにおける「成長分野等・グローバル人材育成訓練」の「成長分野等」の訓練及び一般型訓練コースにおける「一般団体型訓練」については、各コースで対応することとし、さらに中長期的キャリア形成訓練、育休中・復職後等人材育成訓練、従来の制度導入コースにおける、事業主団体助成のうち教育訓練・職業能力評価制度の作成、教育訓練プログラムの開発については、平成28年度限りで廃止いたしました。

なお、キャリアアップ助成金(人材育成コース)についても、生産性要件の導入、支給限度額の引き上げ等について制度の見直しを行っております。(500万円→1000万円)





制度・仕組みの具体的な要件や手続きについては、上記の各URLを参照いただくとともに、各都道府県労働局、都道府県職業能力開発サービスセンター等の窓口にご相談いただければと思います。
本件助成金の積極的な活用をよろしくお願いします。