~所定労働時間の短縮措置等制度他編
前回は、改正された介護休業制度についてお話しました。これは、法律に定められた従業員の権利であり、従業員から申し出があった時には、介護休業を取らせなければなりません。
しかし、法律で定められている制度はこれだけではありません。
所定労働時間の短縮措置等
今回の育児・介護休業法の改正で、介護休業とは別に、所定労働時間の短縮等の利用ができるようになりました。ただし、これは事業主の選択的措置義務といわれるもので、会社は次の4つのうちの1つの制度を導入すればOKです。
1.所定労働時間の短縮
2.フレックスタイム制
3.始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げ
4.労働者が利用する介護サービス費用の助成等
会社は上記4つの制度のうち、どれか1つ以上を選んで制度導入しなければなりません。
しかも、制度の利用開始から3年間のうちで2回以上利用できるようにしなければいけません。
どの制度を導入するかは会社に決定権があります。
しかし、その決定した制度の利用を従業員が申し出たなら、会社は断ることができません。
ですから、例えば、会社が「短時間勤務」を導入した場合、「短時間勤務」を1年間申し出て、その後「介護休業」を2ヶ月とって、さらにまた、「短時間勤務」を1年10ヶ月続けるなんてこともできます。
また、3年間ずっと「短時間勤務」なんてことも可能です。
会社にとっては、かなりの負担になるかもしれません。
しかし、従業員の「仕事と介護の両立支援」という面では有効な制度です。
大切な人材が会社を辞めていく介護離職を防ぐのに、効果があると思います。
法改正に伴った就業規則の変更をできるだけ速やかに進め、さらにその内容を従業員に周知することで、潜在的な介護離職者の離職を未然に防ぎましょう。
この制度導入を機に、全社的な「労働時間の短縮」「長時間労働の解消」に乗り出しては如何でしょうか?
長時間労働の解消は、「仕事と介護の両立」だけでなく、
「仕事と育児の両立」
「ワーク・ライフ・バランス」
「女性活躍」
「パワハラ防止」
「マタハラ防止」等々、
最近流行りのキーワードに有効な処方です。
残業免除制度
次に、残業免除制度についてお話します。この制度は、今回の法改正で新たにできた制度です。
育児については同様の制度があったのですが、今回、介護についても残業免除制度ができました。
この「介護のための残業免除制度」は、介護が終了するまでの間、従業員が申し出れば、会社は残業をさせることができません。
「事業の正常な運営を妨げる場合には請求を拒否できる」ことになっているので、この文言を理由に、この制度を利用させない事業主も出てきそうです。
しかし、これは、通常考えられる相当な努力を行っても、事業運営に重大な支障が出ることが、客観的に証明できる場合です。
その従業員の担当する作業の内容、作業の繁閑、代替要員の配置の難易などの事情を考慮して客観的に判断することとなります。
通常の「忙しい」とか「今は繁忙期だから」というような理由で制度利用を制限するのは難しいと考えておいたほうがよいでしょう。
従業員の希望通りに制度利用させるのが基本だと思ってください。
介護休暇制度
さらに、「介護休暇」が1年に5日取れるのですが、この「介護休暇」を「半日単位」で取れるようになります。時間外労働・深夜業制限制度
ついでにお話しておくと、今回の改正事項ではありませんが、介護を行っている従業員が申し出た場合には、1.残業を「1ヶ月24時間以内」に抑えなければなりません。
2.深夜(PM10:00~AM5:00)に働かせることもできません。
就業規則への明記は必須
以上のような介護に関する法改正によって、「仕事と介護の両立」が少しはやり易くなるのではないでしょうか?介護離職者は年間10万人弱、そのうち2割は男性です。
40代・50代の重要ポストに就いている従業員の介護離職が御社に与えるインパクトを考えてみてください。
何としてでも介護離職を食い止め人材の流出を防ぐことは、これからの御社の経営課題の1つではないでしょうか?
早め早めの手立てを打って、御社の労務リスクの軽減を図っていきましょう。
なお、今回お話した制度については、制度利用が除外される従業員もいます。
その辺りのことも含めて、就業規則にしっかりと明記しておくことで、従業員との無用なトラブルを防ぐことができます。
介護に関する制度は多岐にわたり、また、適用除外者等もあるのでかなり複雑です。
詳しいことは、専門家である我々社会保険労務士にお尋ねいただくのが良いと思います。
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