2017年10月13日金曜日

漫喫「マンボ-」に残業代支払い命令 残業月123時間

「首都圏を中心にインターネットカフェや漫画喫茶を展開する会社の元従業員の男性が時間外労働に対する割増賃金の支払いを求めた訴訟について、今月11日、東京地裁は、同社に1,000万円を超える金額の支払いを命じた。」という報道がありました。
 判決は、「入社面接時に給与のどの部分が固定の残業代か説明をせず、(原告である男性と)残業代に関する合意がない」と認定。退社時からさかのぼった2年間(時効で賃金の請求権が消滅するまでの期間)において、法定労働時間を上回る労働が毎月82~123時間に上ったと認め、この時間を積算した未払い残業代などの支払いを命じたとのことです。
最近、定額残業代に対する報道が多くなっていますが、そのメリット・デメリットについて考えてみたいと思います。

 残業時間を削減するには、変形労働時間制、みなし労働時間制などの特殊な労働時間制度を導入することがまずは有効と考えられますが、導入してもなかなか大幅な削減にはつながらなかったり、あるいは導入するには制度の整備などちょっとハードルが高いという企業もあります。その場合はとりあえず、毎月固定の定額残業代を設定して支給することが手っ取り早くて有効な対策であるとよく言われます。

 定額残業代については労働基準法上明確に言及されていません。法律の趣旨からいって、積極的に奨励するような制度ではないと思われますが、過去の判例などを参考にして違法とされない運用を心掛ける必要があります。

定額残業代が合法と認められるためには以下の要件を満たさなければなりません。
①残業代に相当する部分が、他の賃金と明確に区分されている
②何時間分の残業代に相当するのか定められている
③実際の残業時間で計算された残業代が定額残業代を超えた場合には、その差額が支払われている

 よく「残業代を毎月定額で払うようにすれば、後はどんなに残業してもそれ以上は払わなくていいんですよね。」と聞いてくる企業の方がいますが、実際の残業時間が定額残業代相当分を超えればその差額分は支払う必要があります。

 会社からみれば、残業が少ない月は定額なので働いていない分も余計に払い、さらに残業が定額相当部分を越えたら超えたで差額を支払うことになり、労基法遵守の観点からいえば、定額残業代制度は会社にとって本来メリットのある制度とはいえないのです。

多くの企業が残業代を毎月固定で支給する本当の狙いは

①いま現在支給している給与の中から残業代を捻出したい
(つまり従業員の認識しているであろう自身の基準内賃金を実質引き下げることを意味します)
②見せかけの月例給与の総支給額を多くしたい
③残業代の面倒な計算を省きたい。

①②は従業員にとって不利益な事項であり、やり方によっては従業員のモチベーションに大きなマイナス作用を及ぼしかねないということになります。

以上のような点をよく考えて固定残業制を導入すべきかどうかを検討してください。

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