2016年10月30日日曜日

事務所通信 2016年11月号

1.平成28年の年末調整に向けて
2.平成28年度の地域別最低賃金の改定状況
3.マタハラの防止措置を事業者に義務付け②
4.お仕事カレンダー11月

2016年11月号 事務所通信はこちら


2016年10月28日金曜日

「労災受給者の解雇は正当」 差し戻し審で東京高裁

 国から労災保険の給付を受けながら療養中だった専修大元職員の40代の男性が、一定の補償金(打ち切り補償)を男性に支払っただけで同大が解雇したのは不当として、同大に労働者としての地位確認を求めた訴訟の差し戻し審判決が12日、東京高裁であった。河野清孝裁判長は「解雇権の乱用ではない」とし、原告側の訴えを退けた。

 労働基準法は「使用者は業務上の傷病で療養中の労働者を原則、解雇できない」と規定。一方で「使用者が労働者に療養補償を行い、3年を経過しても治らなければ、平均賃金1200日分の打ち切り補償を支払い解雇できる」とも定めている。専修大は男性に療養補償をしていなかった。

 1、2審は「療養補償せず解雇するのは違法だ」と判断。しかし最高裁は昨年6月、「労働者が労災保険を受給していれば、使用者は療養補償をしていなくても打ち切り補償を行い解雇できる」との初判断を示した。その上で「解雇の妥当性などの審理を尽くすべきだ」と高裁に差し戻した。

 差し戻し審判決は最高裁の解釈を踏襲し、「労災保険は療養補償と実質的に同一だ」とし、解雇は正当だったと認定。その上で「打ち切り補償後の解雇でも、使用者が労働者の回復のための配慮を欠くなどした場合は解雇権の乱用となる場合はある」とも指摘した。

 判決後、原告側は「労災で現在休職中の労働者が打ち切り補償後に簡単に切り捨てられてしまう恐れが出る不当判決だ」と述べた。

精神疾患の労災30代多く「若年労働者層の対策必要」


 長時間労働やパワハラなどで精神疾患となり、労災認定された事案の発症時の平均年齢は39・0歳、年代別では30代が最多だったことが分かった。心筋梗塞など脳・心臓疾患の労災事案では発症時の平均が49・3歳、最多は50代だった。厚生労働省が25日、過労死遺族らで構成する協議会に資料を示した。

助成金等の改正についてのパンフレット公表


 厚生労働省は以下の助成金改正についてのパンフレットを公表しました。

※「職場定着支援助成金(個別企業助成コース)のご案内」(平成28年10月19日版)は準備中となっています。
その他、65歳超雇用推進助成金の創設については、高齢・障害・求職者雇用支援機関のホームページにアップされています。
65歳超雇用推進助成金の創設について(平成28年10月19日より)

2016年10月23日日曜日

「マイナンバー制度の現状と将来について」の説明会動画を掲載 内閣官房


 内閣官房のマイナンバー制度ページに13日、内閣官房社会保障改革担当室による「マイナンバー制度の現状と将来について」の説明会動画がアップされました。

雇用保険二事業による助成金等の見直し


 平成28年度補正予算の成立に伴い、雇用保険二事業による助成金等について、必要な見直しが行われることになりました。(平成28年10月19日施行)
【見直し等の概要】
・再就職支援奨励金の見直し
・受入れ人材育成支援奨励金の見直し
・65歳超雇用推進助成金創設
・生活保護受給者等雇用開発助成金創設
・介護離職防止支援助成金創設(介護支援取組助成金廃止)
・職場定着支援助成金(個別企業助成コース)の見直し
・キャリアアップ助成金見直し
・キャリア形成促進助成金、助成対象訓練追加
・地域活性化雇用創造プロジェクト創設
・地域雇用開発助成金(地域雇用開発奨励金)暫定措置  など

「介護支援取組助成金」が「介護離職防止支援助成金」に移行


 平成28年度第二次補正予算で創設されたことに伴い、「介護支援取組助成金」が、平成28年10月19日から「介護離職防止支援助成金」に移行されました。
これにより、「介護支援取組助成金」は、平成28年10月18日までに支給要件を満たした事業主が申請できることとなりました。

「介護離職防止支援助成金」は、介護に直面した労働者の支援のため、相談窓口の設置や、労働者が介護休業の取得・職場復帰をした場合や、仕事と介護の両立のための勤務制度を利用した場合等に助成する内容となっています。

移行についての厚労省発表内容の詳細は、以下のURLからご覧いただけます。
厚労省HP「介護支援取組助成金の申請について」
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000140307.pdf

65歳超雇用推進助成金の創設について 高齢・障害・求職者雇用支援機構


 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構は19日、高年齢者の安定した雇用の確保のための定年の引上げ等の措置を実施した事業主に対して支給する「65歳超雇用推進助成金」についての情報を公表しました。

<65歳超雇用推進助成金の概要>

65歳以上への定年引上げ等の取組みを実施した事業主に対して助成するものであり、高年齢者の就労機会の確保および希望者全員が安心して働ける雇用基盤の整備を目的としています。

<主な受給要件>

労働協約または就業規則(以下「就業規則等」という。)による次の(イ)~(ハ)までのいずれかに該当する新しい制度を平成28年10月19日以降において実施した事業主であること。
(イ) 旧定年年齢(※1)を上回る65歳以上への定年引上げ 
(ロ) 定年の定めの廃止
(ハ) 旧定年年齢及び継続雇用年齢(※2)を上回る66歳以上の継続雇用制度の導入
(※1) 法人等の設立日から、上記の制度を実施した日の前日までに就業規則等
    で定められた定年年齢のうち最も高い年齢をいいます。
(※2) 法人等の設立日から、上記の制度を実施した日の前日までに就業規則等
    で定められた定年年齢または希望者全員を対象とした継続雇用年齢の
    うち最も高い年齢をいいます。
このほかにも、支給対象となる事業主の要件があります。
詳しくは下記URLをご参照ください。

<支給額>

実施した制度に応じて、次に定める額を支給します。
① 65歳への定年の引上げ 100万円
② 66歳以上への定年引上げまたは定年の定めの廃止 120万円
③ 希望者全員を66~69歳まで継続雇用する制度の導入 60万円
④ 希望者全員を70歳以上まで継続雇用する制度の導入 80万円
※定年引上げと継続雇用制度の導入を合わせて実施した場合でも、支給額は定年引上げを実施した際の額となります。
詳しくはこちら【独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構】
http://www.jeed.or.jp/elderly/subsidy/subsidy_suishin.html

過労死・過労自殺を本気で防ぐには

過労死の定義

過労死とは、業務における過重な負荷による脳血管疾患もしくは心臓疾患を原因とする死亡、もしくは業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡をいいます。
これが厚生労働省による定義です。

死の結果に労災保険が適用される基準

この定義に対応して、「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く)の認定基準について」(平成13年12月12日付基発第1063号厚生労働省労働基準局長通達)と、「心理的負荷による精神障害の認定基準について」(平成23年12月26日付基発1226第1号厚生労働省労働基準局長通達)が出されています。
一般に労働災害が認定されるには、労働と災害との間に相当因果関係が必要です。相当因果関係というのは、労働と災害との間に「その労働が無ければその災害は発生しなかった」というだけでなく、客観的科学的に見て「災害の有力な原因が労働だと考えるのが自然である」「その労働からその災害が発生するのは、偶然でもなく、異常なことでもない」という関係があることをいいます。
上記の2つの通達による認定基準では、具体的な時間外労働時間が示されています。この基準は「過労死ライン」などと呼ばれることもあります。
この基準を超える場合には、遺族側が過労死・過労自殺について厳格な証明をしなくても労災認定が行われます。
反対に、基準を下回る場合には遺族側が相当因果関係について厳格な証明をしなければ、労災保険が適用されないことになります。
そして、この証明はかなり高いハードルです。

労災保険適用の回避

会社は、重大な労災事故に労災保険が適用されることを嫌います。
それは、次のような事情によるものです。
・会社に損害賠償の請求があった場合には不利となるので、労働と災害との間に相当因果関係があったことを、公の手続きで認定されたくない。
・会社に労働基準監督署の調査が入るきっかけとなる。
・メリット制が適用される場合には、後の年度の労災保険料が割高になる。
(ここでメリット制というのは、100人以上の労働者を使用した事業などに限って適用されるもので、適用されない事業では労災事故が多くても少なくても労災保険料の料率は変わりません。)
こうした事情から、会社は時間外労働時間が過労死ラインを超えないように努めることになります。
中には、過労死ラインを下回る時間外労働しか無いような外形を作っているだけの会社や、労災を隠してしまう会社もあります。

尊い命を守るために

2つの通達が示す基準は、遺族の証明責任の負担を軽くするためのものに過ぎません。
たしかに基準を守っていれば、会社の法的責任が問われることは、ある程度防げるでしょう。
ところが実際には、過労死ラインを下回る時間外労働だったとしても、私生活上の負担や遺伝的要素などによっては、死の結果が発生してしまうことがあります。
基準を守るだけでは、尊い命を守れないのです。
ですから、定期健康診断やストレスチェックの実施とフィードバックなど、労働安全衛生法に示されているような施策は、最低限のこととして必要です。
それだけでなく、労働そのものの身体的・精神的負担、出勤日・勤務時間帯の変則性、休憩・休日の取り方、人事異動の履歴、仕事と生活とのバランスなど、労務管理の視点からのチェックと改善、そして労働環境の維持・増進も行わなければなりません。
各企業の経営者の方々には、是非とも「会社が責任を負わないように」という考えから一歩踏み出して「尊い社員の命を守る」という考えに立っていただきたいと思います。

キャリア形成促進助成金~技能検定合格報奨金制度導入~

技能検定を、積極的に社員に受けさせているような会社にとって活用できるのが、技能検定合格報奨金制度導入に対する助成金です。

助成金額は50万円です(昨年度から倍額になっています)。


この助成金は、その名のとおり、従業員に技能検定を計画的に受検(受験料は会社負担)させ、合格者に報奨金(金額は会社で自由に設定可能)を支給する制度を導入(就業規則に規定)し、実際に合格者に報奨金を支給した場合に支給されます。

技能検定は、その人の有する技能を一定の基準により検定し、国として証明する国家検定制度で、合格者は、技能士と称することができます。国のお墨付きですので、一級技能士など高レベルの社員がいることは、企業の技術力の高さ・信用等になり、他社との差別化にもつながります。
また、このような制度の導入は、社員の技能習得へのモチベーションアップや、人手不足が深刻化するなかで、人材育成に力を入れているということで、人材採用の面でも有利に働くと思いますので、企業にとってもプラスの面が多いと考えます。

技能検定は、建設関係、窯業・土石関係、金属加工関係、一般機械器具関係、電気・精密機械器具関係、食料品関係、衣服・繊維製品関係、プラスチック製品関係、貴金属・装身具関係、印刷製本関係、その他ウェブデザインなど、全部で127職種ありますので、活用できる業種・企業も多いと思います。

社員の技能向上の重要性を十分に認識し、社員教育に力を入れたいと思われている事業主がほとんどでしょう。
このような助成金を活用する方法もありますので、ご検討されてみてはいかがでしょうか。

キャリア形成促進助成金の詳細はこちら

2016年10月15日土曜日

パソコン使用規程・スマートフォン使用規程の再確認をお勧めします

就業規則見直しの必要性

個人のスマートフォンからのネット投稿が原因で、会社の信用が低下したり、閉店に追い込まれたりというニュースが続いたこともありました。
会社が業務上の必要から従業員に貸与しているパソコンやスマートフォンは、本来、業務外の使用が認められない会社の物品です。
個人の所有物の使用を規制するのは困難でも、会社の物品なら合理的な範囲内での規制が許されます。会社を守るためにも、また安易な私的利用で従業員が非難されないためにも、就業規則に使用規程を加えることが必要でしょう。

企業秘密の漏えい防止

インターネットの私的利用によって、ウイルスに感染する可能性が高まります。ウイルスに感染した端末から企業秘密が漏れることもあります。
就業規則には、私的利用の禁止を明確に定めましょう。これと連動して、懲戒規定にも修正が必要となることがあります。
また内容的には重複するのですが、パソコンやスマートフォンの貸与をする場合には、私的利用をしない旨の誓約書を提出してもらうのが有効です。

意図的なデータ持ち出しの防止

うっかりウイルスに感染した結果、意図せず企業秘密が流出するというのではなく、名簿会社に売却する目的で顧客データを盗み出すという事件も発生しています。
この場合には、会社から貸与しているスマートフォンを私的に利用するのではなく、個人所有のスマートフォンを不正に使用することが問題になります。
今やUSB接続の充電ケーブルは、そのほとんどがデータ転送ケーブルを兼ねています。ですから、スマートフォンを充電しているのだと思いきや、データを盗んでいるということもありえます。
さらには、パソコンとスマートフォンの間でデータをリンクさせるのに、無線で行うということも普通に行われています。
こうしてみると、社外に流出しては困るデータの入ったパソコンを扱う従業員は、スマートフォンを持ち込めないというルールにする必要が出てきます。
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会社が従業員に貸与しているパソコンやスマートフォンにあるデータを確認する「モニタリング規定」

労働時間中は、労働者は使用者の指揮命令下に置かれています。
これを使用者の側から見れば、労働者の業務を監視するという関係にあります。
ですから、本来、会社は従業員に貸与しているパソコンやスマートフォンの中にあるデータを確認する権限をもっているわけです。
とはいえ、会社が端末内のデータを確認するとまでは思っていない労働者が、端末内にプライベートなデータを残すかもしれません。
この場合に、会社には権限があるということで、プライバシーをあばいてしまったら、会社の方が非難されるかもしれません。
そうならないように、就業規則には、会社が端末内のデータを閲覧できる旨を規定し、きちんと周知しておきましょう。
さらには、企業秘密を管理する従業員が、データファイルをメールに添付して送信するということも考えられます。こうした危険を考えると、端末の使用履歴もチェックしなければなりません。

少しでも安心するためには

就業規則の見直しというと、総務・人事の担当者が中心に改定案を作ることになるでしょう。しかし、こうした従業員が、端末でのデータ管理についての専門知識を持ち合わせていることは稀でしょう。
結局、労務管理についての専門家とデータ管理・ネットワーク管理の専門家とで、よく話し合い、打ち合わせを繰り返して就業規則の見直しを進めることが必要になります。
もし、社内に専門家がいないのであれば、社外の専門家の力を借りてでも、就業規則の改定や運用の定着を図る必要があります。
ここまでやって、初めて少し安心できるというのが、日本の現状なのです。

パワハラ加害者に対する会社の対応と被害者のとるべき行動

パワハラとは

職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係など職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与え、または職場環境を悪化させる行為をいいます。

会社の立場から

この定義によると、パワハラの加害者は「職務上の地位や人間関係など職場内での優位性」がある人です。
つまり、会社の上司が加害者となって部下を攻撃したり、先輩が後輩に苦痛を与えたりというのが、パワハラの基本的な構造となります。
しかし今では、部下が共同して上司をいじめるような逆パワハラも問題とされるようになっています。
いずれの場合も会社としては、上司と部下、先輩と後輩との間にトラブルが発生すれば、ついつい会社に対する貢献度や経験年数などを考えて、上司や先輩にあたる従業員の肩を持つ傾向が強くなってしまいます。
しかし、世間のパワハラに対する目は、年々厳しくなってきています。
会社が加害者の味方をすれば、マスコミやネット上の評判の低下から、従業員の定着率は低下しますし、そもそも求人広告に対する応募者が減少するでしょう。
会社としては、会社に対する貢献度や業務経験への評価はきちんとする一方で、加害者としての責任も追及する態度が求められます。つまり信賞必罰です。

パワハラの定義の抽象性

パワハラの定義は抽象的なものになりがちです。
ところが懲戒処分を有効に行うには、就業規則や労働条件通知書などに具体的な懲戒規定が必要です。つまり、パワハラについての懲戒規定が無かったり、たとえあっても抽象的すぎて具体的な言動がパワハラにあたるかどうか判断できなかったりすれば、加害者が有効に処分されることはありません。
会社がパワハラ対策をきちんとするには、懲戒規定を読めばパワハラの具体的な定義と具体例がすぐわかるようにしておく必要があります。
パワハラについての具体的な定義が無い職場には、必ずパワハラがあると言っても過言ではないでしょう。
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被害者のとるべき行動

パワハラ対策は会社の責任です。
ですから被害者としては、まず、会社で決められている相談窓口に相談すべきです。もし、相談窓口が良くわからなければ、加害者が上司の場合には会社の担当部署に、また、加害者が先輩の場合には上司に相談すべきです。基本的にパワハラの問題は、社内できちんと解決すべきなのです。
もし、被害者が社内での解決を考えず、一足飛びに労基署などに相談すると、事情のわからない会社は対応に困ってしまいます。
とはいえ、会社がきちんと対応できない場合には、会社が責任を負えないわけですから、労基署の総合労働相談コーナー、労働委員会、法テラスなどの機関や、弁護士、社労士などの専門家に相談することをお勧めします。

相談窓口の重要性

会社としては、パワハラ被害者がいきなり社外に相談するなどは避けたいところです。
そのためには、きちんとパワハラ相談窓口を設け、問題が起きたらここに相談するよう従業員全員に周知し、教育しておかなければなりません。


入社半年までの年次有給休暇の付与について

年次有給休暇は、出勤率などの要件を満たせば入社から半年で10日付与されるのが労基法の決まりです。

しかし、半年有給休暇がないのも何かあったときに困るだろうから…と、入社時に3日、残りを半年後に7日など、前倒しで付与されている会社も結構見受けられます。
このような取り扱いは、
①法廷の基準日(付与日)以前の短縮された期間について8割出勤要件は全出勤とみなすこと
②次年度以降は初年度の付与日までかそれ以上の期間繰り上げること
これらを要件に認められています。
②について、少しわかりにくいですが、前倒しで最初に付与した日が基準になるということです。
例えば、H28年4月1日入社時に3日前倒しで付与し、H28年10月1日に7日付与した場合、次年度の付与日はH29年10月1日ではなく、H29年4月1日(かそれより前)になります。

就業規則の作成と変更

就業規則(変更)届

就業規則を新たに作成しまたは変更した場合に、従業員が10名以上であれば、労働基準監督署長への届出が必要です。
具体的な提出書類は「就業規則(変更)届」、新たな届なら就業規則、変更届なら新旧対照表、そして「意見書」です。

意見書とは

「意見書」というのは、就業規則の内容または変更について、労働組合が意見を述べた書面です。
労働者の過半数で組織する労働組合が無ければ、労働者の過半数を代表する者が意見を書きます。
かつて「就業規則(変更)届」のルールについて検討されたときに、「同意書」が必要であるという見解と、「同意書」は不要であるという見解に分かれました。
結局、間をとって「意見書」を添付することになったそうです。
「意見書」ですから、これに多くの意見や要望が書かれていても、会社にはこれに対応する法的義務がありません。
しかし、中には貴重な意見もありますから、会社は参考にすべきでしょう。

労働組合や代表者の役割

労働組合は、就業規則の内容または変更内容について、組合員の意見を取りまとめて「意見書」に記入することが求められています。
労働者の過半数を代表する者も、労働者の過半数の意見を取りまとめて「意見書」に記入することが期待されています。

代表者の選出方法

労働者の過半数を代表する者は、労働者側の代表者です。
ですから、管理監督者など使用者側に含まれる人は、労働者の過半数を代表する者にはなれません。
そして、その選出方法も民主的でなければなりません。
会社側が候補者を選んだり推薦したりはできないのです。候補者を選ぶ段階から、労働者側の立場にある人たちが話を進めることになります。
ここをきちんとしないと、労働者の過半数を代表する者の選出が無効になり、「意見書」も無効になります。
すると「就業規則(変更)届」を提出しても、その届出が無効になってしまいます。

就業規則作成・変更の手順

「意見書」を作成する都合上、就業規則の作成や変更の手順は次のようになります。
・就業規則(変更)案の作成
→社内決裁
→従業員への周知
→「意見書」の作成
→労働基準監督署長への届出
※内容を公開する前に意見を求めることはできないので、就業規則の内容を公開してから「意見書」を作成することになります。


就業規則(変更)の有効性

判例によると、就業規則は周知されていないと効力がありません。これは、労働基準監督署長に届出をしていても同じです。
このことから明らかなように、届出は法令により義務づけられているものの、届出で有効になるわけではなく、周知することによって有効になるのです。

周知の意味

「周知」という言葉は、本来、周(あまね)く=広く知らせるという意味です。
しかし、就業規則について求められる周知は、内容について一人ひとりの従業員に知らせることではありません。
就業規則ができたこと、変更されたことだけ伝えておいて、あとは見ようと思えば見られる状態にしておけば良いのです。
たとえば、就業規則のファイルを休憩室やロッカー室に置いておくとか、パソコンやスマートフォンで見られるようにしておくのです。
ただし、アルバイトやパート社員などを含め、すべての従業員に見られるようにしておく必要があります。

誤った常識の継続

「就業規則の変更は社員に知らせなくても労働基準監督署長に届け出れば有効」「まず届出をしてから社員に知らせるのが正しい」という誤解は生じやすいものです。
就業規則に限らず、「うちは昔からこれでやっている」ということで、毎回、間違いを繰り返していたり、法改正を知らずに違法な状態から抜け出せずにいることもあります。




労災の上乗せ補償について

最近、うつ病等精神疾患で労災認定されるケースも増えてきました。

労災保険から、財産的損害の一部はてん補されますが、カバーされない財産的補償の不足分や精神的損害に対する慰謝料等については、別途民事損害賠償の対象となりえます。
特に年齢の若い従業員が重度の障害を負ったり、死亡したりすると、本人の収入によっては損害額が一億円を超える場合もあります。
大企業ならまだしも、中小企業では、とても一度に払いきれる金額ではない場合が多く、会社の存続にかかる事態になるかもしれません。
こうしたリスクを回避しうる制度として考えられるのが、労災上乗せ補償制度です。
労災上乗せ補償としては、損害保険商品などが活用されています。
最近は、メンタルヘルスなどの労務トラブルに備える特約が付帯できる商品などもありますので、検討するのもよいかと思います。
このような補償制度を設ける場合は、就業規則の相対的必要記載事項になりますので、就業規則へ盛り込む必要があります。
適用される従業員の範囲、給付内容等を定めていきましょう。

2016年10月9日日曜日

来年1月から65歳以上も雇用保険の被保険者に:届出は3月31日まで

平成29年1⽉1⽇から施行される雇用保険法の改正法により、同日以降、65歳以上の労働者についても、「⾼年齢被保険者」として雇⽤保険の適⽤の対象となります。

 今回は厚生労働省が作成したリーフレットを元に、必要となる対応の概要を見ていきましょう。

1. 平成29年1⽉1⽇以降に新たに65歳以上の労働者を雇用した場合
雇用保険の適用要件に該当する場合(1週間の所定労働時間が20時間以上であり、31⽇以上の雇⽤⾒込みがある場合)は、事業所管轄のハローワークに「雇用保険被保険者資 格取得届」を提出します。

2.平成28年12月末までに65歳以上の労働者を雇用し平成29年1⽉1⽇以降も継続して雇⽤している場合
雇用保険の適用要件に該当する場合は、平成29年1⽉1日より雇用保険の適用対象となりま す。この場合、事業所管轄のハローワークに「資格取得届」を提出します。
この場合には提出期限の特例があり、平成29年3⽉31日までに提出することとされています。
なお、平成28年12月末までに雇用した65歳以上の労働者について、適用要件に該当するかどうかは、平成29年1月1日時点で判断します。

3.平成28年12⽉末時点で⾼年齢継続被保険者である労働者を平成29年1⽉1⽇以降も継続して雇用している場合
ハローワークへの届出は不要です(⾃動的に⾼年齢被保険者に被保険者区分が変更されます。)。

国税庁 「平成28年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」をアップ


 国税庁は29日、サイト上に「平成28年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」をアップしました。
「平成28年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」
https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/hotei/tebiki2016/PDF/all.pdf

短時間労働者の健康保険・厚生年金適用拡大の経過措置


 短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大に伴い障害者または長期加入者特例に該当する老齢厚生年金を受けている方に対して経過措置が設けられました。
平成28年10月1日に短時間労働者として被保険者になったことにより、老齢厚生年金の定額部分が支給停止された場合は、届出を行うことで定額部分の支給停止が解除されるため、該当者は届出を行うよう年金機構がリーフレットを公開しました。
 届出に必要な書類は、平成28年9月30日以前から引き続き勤務していることを明らかにすることができる書類です。
詳細は、以下のURLからご覧いただけます。
年金機構HP
http://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2016/0929.html

平成28年版 厚生労働白書が公表されました。

 厚生労働省は、10月4日平成28年度版の厚生労働白書を発表しました。  法改正による65歳以上の雇用保険の適用と関係し、働く意欲のある高齢者が、長年培ってきた知識や経験を生かし、年齢にかかわりなく活躍し続けることがで きる「生涯現役社会」を実現することが重要であると方針を示しています。  

平成28年版 厚生労働白書本文


平成28年版 厚生労働白書概要