2017年6月30日金曜日

客室乗務員マタハラ訴訟が和解 会社が産前地上勤務を原則認める方向へ


 「妊娠判明後に地上勤務への配置転換を認めず、休職を命令した措置はマタハラ(マタニティーハラスメント)に当たるとして、国内の大手航空会社の現役客室乗務員が同社を相手取り、休職命令の無効確認などを求めた訴訟について、今月28日、地方裁判所で和解が成立した。」という報道がありました。
 和解の内容には、妊娠した客室乗務員が地上勤務を申請した場合、原則的に認めることや、会社は労働組合側に対して客室乗務員から地上勤務になった人数や配置先などの情報を開示するといったことなどが盛り込まれたそうです(和解金の支払いの有無などについては、守秘義務により明らかにされていません)。
 同社では、昭和55年に「妊娠した場合、本人の希望により休職か地上勤務のどちらかを選べる」という規定が導入されたそうですが、経営難などにより、平成20年に、この規定に「会社が認める場合のみ」という条件が付け加えられ、認められないことが多くなったそうです。
 その「会社が認める場合のみ」という条件に合理性があれば問題にならなかったのでしょうが、約5千人の女性の客室乗務員がいる会社であるにもかかわらず、産前地上勤務の枠を数枠(一桁後半)しか用意していなかったということで、ほぼ認めないことが前提といわれても仕方がない状況だったようです。
 休職した場合の不利益の程度も大きく、無給となり、賞与も支給されず、退職金に影響する勤続年数に算入されず、社宅からも退去となるなどの不利益があったということです。
 マタハラなどに敏感なこのご時世ですから、裁判が長引くと会社のイメージダウンにつながりかねないという判断で、和解に踏切ったのかもしれませんね。しかし、会社の広報部は「会社の先進的な制度(他社にはない産前地上勤務制度)が和解で確認された。当社としては今後ともこの制度を率先して充実していきたいと考えている」とコメントしたそうで、和解を前向きに捉えているようです。
 参考までに、労働関係法令を確認しておきましょう。
〔確認〕
厚労省:報道発表資料 平成28年8月31日 別紙2
妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いに関する解釈通達について
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11902000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Koyoukintouseisakuka/0000134670.pdf
※もし、今回の裁判が続いていたら、この行政解釈や過去の最高裁判例に沿って、休職が不利益取扱いに当たるかが争点になっていただろうと思われます。
 もう一点、労働基準法における産前・産後の取り扱いも確認しておきましょう。
〔確認〕産前産後休業等(労働基準法第65条)
 6週間(多胎妊娠の場合には14週間)以内に出産する予定の女性が休業(産前休業)を請求した場合、使用者はこの労働者を働かせることはできません(女性労働者から働きたくないという請求がない限り、この女性労働者を働かせることができる)。
 また、妊娠中の女性が請求した場合には、負担を軽くするために他の軽易な業務に変更する必要があります。しかし、そのためにわざわざ新たに軽易な業務を作る必要はありません。
 一方、産後8週間を経過しない女性は、請求の有無を問わず働かせることはできません(産後休業)。ただし、産後6週間を過ぎた女性が請求した場合であって医師が働くことに支障がないと認めた業務につかせることは、問題ありません。
※産前の労働が可能である点は確認しておきましょう(本人の希望次第)。他の軽易な業務への転換の規定があることも確認しておきましょう。なお、「しかし、そのためにわざわざ新たに軽易な業務を作る必要はありません」という部分は、行政解釈(通達)で補足されている内容です。

マイナンバー 健康保険組合への届出の注意点(社労士に委託する場合)

 厚生労働省保険局保険課から全国社会保険労務士会連合会に宛てて、「社会保険労務士が本人から個人番号の提供を受ける場合の本人確認措置について」という連絡(会員への周知依頼)があり、その内容が公表されました(連絡は平成29年6月26日付け)。

 平成29年1月1日より、健康保険組合が管掌する健康保険の被保険者等の資格取得等の届出に際して、「被保険者資格取得届」及び「被扶養者異動届」に個人番号を記載しなければならないこととなるなど、健康保険の事務手続の現場において、個人番号の取り扱いが開始されています。
 本人(被保険者等)から個人番号の提供を受ける事業主や保険者は、「番号確認」及び「身元(実存)確認」という本人確認の措置を行うことが求められておりますが、事業主の代理人として健康保険の事務手続を行う社会保険労務士も同様であることを確認する内容となっています。
 なお、協会けんぽの被保険者等の資格取得等の届出に関しては、個人番号の記載は必要ありません。
 健康保険組合に加入している事業所の手続きを受託している場合は、本人確認業務を会社が行うのか、その部分の事務も受託しているのかを確認しておく必要があります。本人確認業務について、業務委託契約書に記載している内容も確認しておきたいですね。
 詳しくは、こちらをご覧ください。
社会保険労務士が本人から個人番号の提供を受ける場合の本人確認措置について
https://www.shakaihokenroumushi.jp/LinkClick.aspx?fileticket=lK17Flyiw1Y%3d&tabid=340&mid=726

2017年6月29日木曜日

時間外労働の上限設定を改善することでもらえる「職場意識改善助成金」


 今回、ご紹介する助成金は「働き方改革実行計画」の中でも目玉のひとつになっている時間外労働の上限設定に取り組む中小企業に対して支給されます。
【支給要件】 
●支給対象となる事業主
「労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準」に規定する限度時間(月45時間、年360時間等)を超える内容の時間外・休日労働に関する協定(特別条項)を締結している事業場を有している中小企業事業主。

※各事業場において、過去に特別条項を廃止したことがある場合と、適用除外の事業または業務を行なう労働者がいる事業場は除かれます。

●支給対象となる取り組み
いずれか1つ以上の実施が要件です。

○労務管理担当者に対する研修
○労働者に対する研修、周知・啓発
○外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など)によるコンサルティング
○就業規則・労使協定等の作成・変更(時間外・休日労働に関する規定の 整備など)
○労務管理用ソフトウェアの導入・更新
○労務管理用機器の導入・更新
○デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
○テレワーク用通信機器の導入・更新
○労働能率の増進に資する設備や機器等の導入・更新
(小売業のPOS装置、飲食店の自動食器洗い乾燥機など)

※原則としてパソコン・タブレット・スマートフォンは対象となりません。

●成果目標の設定
事業主が事業実施計画において指定した全ての事業場において、限度基準(月45時間、年360時間等)以下の上限設定を行なうこと。


【支給額】
成果目標を達成した場合に、支給対象となる取り組みの実施に要した経費の一部を支給します。

●対象経費
謝金・旅費・借損料・会議費・雑役務費・印刷製本費・備品費・機械装置等購入費・委託費

●助成額
対象経費の合計額×補助率(3/4)

※上限額は50万円


【締め切り】
申請の受付は平成29年12月15日(金)までです。

※支給対象事業主数は国の予算額に制約されるため、12月15日以前に受け付けを締め切る場合があります。

中小企業は大手企業と比べると時間外労働の削減は難しく、取り組むことにためらう事業主様もたくさんいらっしゃることかと思います。

しかし遠くない未来、時間外労働時間に罰則付きの上限が設けられ、法律で取り締まられることが想定されます。

時間に余裕がない中小企業だからこそ、早めの対策がお勧めです。ご検討の際には専門家へご相談ください。

2017年6月27日火曜日

社会保障の4つの柱と5つの社会保険

 日本国憲法第25条は、生存権の保障について定めるとともに、生存権を保障することが国の責務だと規定しています。この第25条に基づいて政府は社会保障制度の整備を進め、社会全体の責任として国民の「健康で文化的な最低限度の生活」を保障しようとしています。

日本の社会保障制度の4つの柱は、
①保険料を支払っておいて病気などになったときに給付を受ける「社会保険」②社会的な困窮者に一定水準の生活を保障する「公的扶助」③高齢者や障害者などに施設やサービスを提供したりする「社会福祉」④感染症対策をはかる「公衆衛生」となっていましたね。

<①社会保険について>
 社会保険には5つの保険があります医療保険は病気などになったとき、年金保険は高齢などになったときに、あらかじめ支払っておいた保険料を財源として給付されるものです。
職業別にどれに加入するかが分かれており、一般的な民間会社の被用者は「健康保険」と「厚生年金」に加入し、自営業者などは「国民健康保険」と「国民年金」に加入し、公務員などは「共済組合」と「共済年金」に加入することで、国民すべてを対象とした皆保険・皆年金が実施されています。
みなさんが病院へ行って実際にかかった費用の3割のみを窓口負担すればよいのは、医療保険があるからです。
なお、「後期高齢者医療制度」は75歳以上の高齢者全員を対象とした医療保険ですが、新たな制度につくりなおすことが検討されています。
雇用保険は失業者などに対して給付されます。
不況が深刻化すると、この“雇用”保険の給付額も増えていきます。
労働者災害補償保険は労働上の災害に対して給付されます。
介護保険は、介護が必要だと認定された者に給付される保険です。
40歳以上の国民が支払った保険料と税金を財源として、地方自治体が2000年から運営しています。
受給の認定をうけて老人ホームに入ったり、デイサービス施設に通ったり、ホームヘルパーに来てもらったりすると、利用者はかかった費用の1割を負担します。

<②公的扶助について>
扶助の“扶”も“助”も、助けるという意味です。
公的扶助とは、生活保護法に基づいて困窮者を社会で助け支えることです。
具体的には、生活・教育・住宅・医療・介護・出産・生業・葬祭の8項目のうち、必要な項目の必要な金額を合算して生活保護費を支給します。
不況の影響で生活保護の受給件数が増加していることがニュースになっています。

<③社会福祉について>
社会的に保護や援助を必要とする者に対し、各種の福祉法に基づいて施設を整えたりサービスを提供したりします。
高齢者児童身体障害者知的障害者母子などのうち誰を対象とするかでそれぞれ福祉法が定められています。
<④公衆衛生について>
地方自治体の保健所や保健センターなどが中心になって行います。感染症対策としてイメージしやすいのは乳幼児期の予防接種でしょう。また、がん検診などの各種健康診断や、浸水被害にあった住宅への消毒作業や、飼っている犬・猫などの保護・管理なども、公衆衛生に含まれます。



LGBT 職場での対策も必要


今月中頃、新聞・テレビなどの報道機関において、LGBTの話題がいくつか取り上げられました

ひとつは、「あるフィットネスクラブにおいて、性同一性障害で女性への性別適合手術を受けた会員が、男性更衣室などの使用を求められ、人格権を侵害されたなどとして、クラブの運営会社に慰謝料などを求めた訴訟が、地方裁判所で和解した。」というものです。
具体的な和解条項は非公表ですが、裁判長は「性自認を他者から受容されることは人の生存に関わる重要な利益で、尊重されるべきだ」としてクラブ経営会社側に改善を求めたとのことです。
また、「文部科学省は、小中学校で2020年度から順次実施される次期学習指導要領の解説書に、LGBTへの配慮も新たに盛り込んだ。」といった報道もありました。

LGBTとは、レズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(性同一性障害等で、心と体の性が一致しない人)の頭文字を取った言葉です。
アセクシュアル(他者に対して恋愛感情も性的感情も向かない者)等も含む「性的マイノリティ(性的少数者)」の総称として使われることもあります。

上記の訴訟は、顧客への対応が問題となったものですが、社員への対応についても考えてみましょう。
日本労働組合総連合会(連合)が、昨年、日本初となるLGBT関連の職場意識調査を実施・公表しましたが、これによると、働く人のうち、LGBT等当事者の割合は8%(おおむね13人に1人)とのことでした。
また、今年になって、日本経済団体連合会(経団連)も、LGBTへの企業の取り組みに関するアンケート調査を実施。5月にその結果を公表しています。これによると、調査対象となった大企業では、約4分の3の企業が、社内の人材に関して、既にLGBTに関して何らかの取組みを実施または検討しているとのことです。
当てはまる取組みをみると、社内セミナー等の開催、社内相談窓口の設置、採用活動におけるLGBTへの配慮、性別を問わないトイレ等職場環境の整備などが上位を占めています。

地方裁判所ではありますが、LGBTも「尊重されるべきだ」とされたことや、上記の調査結果をみると、LGBTのことは無視できない問題といえそうです。

職場での対応として、さすがに、いきなり、性別を問わないトイレや更衣室などの職場環境の整備を行うことは難しいでしょうが、社内セミナーなどでLGBTに関する理解を深めておくといった取組みは必要かもしれませんね。

調査結果については、こちらをご覧ください。

<LGBTに関する職場の意識調査の結果(連合)>
https://www.jtuc-rengo.or.jp/info/chousa/data/20160825.pdf

2017年6月25日日曜日

両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)を申請しよう

1. 女性活躍加速化コースの概要 

女性活躍推進法(※)に基づき、自社の女性の活躍に関する「数値目標」、「数値目標」の達 成に向けた取組内容(「取組目標」)等を盛り込んだ行動計画を策定し、行動計画に沿った取組を 実施して「取組目標」を達成した事業主及び「数値目標」を達成した事業主に対して助成金を支給 します。(最高限度額96万円)

本助成金は、目標達成の段階に応じて、以下の2つのコースにわかれています。

①加速化Aコース:数値目標の達成に向けた取組目標を達成した場合に支給
(常用労働者数300人以下の場合⇔301人以上は対象外)

取組目標を達成した場合           28万5千円<36万円> 
※1企業につき1回限り ※生産性要件を満たした場合は<>の額を支給

②加速化Nコース:数値目標の達成に向けた取組目標を達成した上で、その数値目標を達成した場合に支給(常用労働者数300人以下の場合⇔301人以上は厚生労働省のホームページをご覧ください)

数値目標を達成した場合           28万5千円<36万円>
女性管理職比率が基準値以上に上昇した場合  47万5千円<60万円>
※1企業につき1回限り ※生産性要件を満たした場合は<>の額を支給

具体的な目標例
(1)女性の積極採用に関する目標
・ある採用区分で、採用における女性の競争倍率を引き下げる
・ある採用区分で、取組前に比較して女性の採用人数を増加させ、かつ全採用者に占める女性の割合も引き上げる

(2)女性の配置・育成・教育訓練に関する目標
・ある雇用管理区分(女性の少ない職種等)で、女性の比率を引き上げる
・女性の少ない職種について、女性を増加させる
・係長、主任級の女性を増加させる

(3)女性の積極登用・評価・昇進に関する目標
・女性の管理職の比率を引き上げる
・課長級/次長級/部長級に占める女性比率を引き上げる
・課長級の女性管理職を増加させる

(4)多様なキャリアコースに関する目標
・一般職の女性労働者のうち、総合職へのコース転換者を増加させる

女性活躍加速化コース支給申請の手引きはこちら
女性活躍加速化コースQ&Aはこちら

2.女性活躍推進法とは 

平成27年8月28日に新たに成立した法律です。 この法律に基づき、平成28年4月1日より、以下の措置を講じることが各企業の義務(常時雇用する労働者が300人以下の事業主については努力義務)となりました。
①自社の女性の活躍に関する状況把握、課題分析 
②状況把握、課題分析を踏まえた行動計画の策定、社内周知、公表
③行動計画を策定した旨の都道府県労働局への届出
④女性の活躍に関する情報の公表

3.行動計画とは 

行動計画の策定にあたっては、女性活躍推進法に定める項目について状況把握を行い、課題分析 した上で、自社の課題に基づいた数値目標及び、数値目標の達成に向けた具体的な取組内容(「取 組目標」※)を定める必要があります。
 ※数値目標の達成に向けた取組内容のことを、本助成金では「取組目標」と呼んでいます。
■行動計画の策定にあたり、必ず把握すべき項目(基礎項目)
・採用した労働者に占める女性労働者の割合
・男女の平均継続勤務年数の差異
・労働者の各月ごとの平均残業時間数等の労働時間の状況
・管理職に占める女性労働者の割合
 ⇒上記4項目の他、自社の実情に応じて「把握することが効果的である項目(選択項目)」についても分析し、 自社の女性の活躍に関する課題を洗い出し、取り組むべき目標を設定します。
■行動計画に盛り込むことが必要な項目
・計画期間 (※本助成金では「2年以上~5年以内」で設定することが必要です )
・課題に基づいた数値目標
・数値目標達成のたの取組目標
・取組の実施時期



2017年6月24日土曜日

両立支援等助成金の概要

 6月23日から男女共同参画週間が始まりました。
これを機会に両立支援等助成金について確認してみましょう。
 この助成金は従業員の職業生活と家庭生活の両立を支援するための取組を実施した事業主等 に対して支給する助成金で、次の5種類があります。
①出生時両立支援コース
②介護離職防止支援コース
③育児休業等支援コース
④再雇用者評価処遇コース
⑤事業所内保育施設コース
⑥女性活躍加速化コース

平成29年度「両立支援等助成金のご案内」はこちら

女性活躍加速化コース以外は平成29年度は詳細版が出されておりませんので、
以下は平成28年度の概要です。
内容が一部変更になっておりますのでご注意ください。

支給申請の手引き(平成28年度版)

<出生時両立支援助成金・中小企業両立支援助成金>

男女共同参画週間始まる 6月23日~(内閣府)


 男女共同参画社会とは、「男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき社会」です。(男女共同参画社会基本法第2条)
 内閣府、男女共同参画推進本部では、「男女共同参画週間」を実施しています。
 この取組は、「男女共同参画社会基本法」の公布・施行日である平成11年6月23日を踏まえ、毎年6月23日から29日までの1週間を「男女共同参画週間」として、男女共同参画社会基本法の目的や基本理念について理解を深めることを目指して行われているものです。
 毎年、その年の男女共同参画週間のチャッチフレーズを公募していますが、今年のチャッチフレーズは、「男で○(まる)、女で○(まる)、共同作業で◎(にじゅうまる)」と決定されました。共同作業(共同参画)がより良いというこでしょうね。
 今年も、全国各地で、男女共同参画に関するイベントが実施されます。
 詳しくは、こちらをご覧ください。
内閣府男女共同参画局HP:「男女共同参画週間について」
http://www.gender.go.jp/public/week/index.html
※今年の行事については、「都道府県・政令指定都市、男女共同参画推進連携会議構成団体の実施行事NEW!」でご覧になれます。

2017年6月23日金曜日

「仕事と介護の両立支援」制度が御社を救う⑤!~取組事例編

仕事と介護の両立支援制度は、中小企業に有利!

育児と違い介護は個別性が大きく、先の見えずらい、先の見通しが立ちにくいものです。
ですから、企業は、仕事と介護の両立のためには、より柔軟な対応が必要になってきます。
そうであるならば、大企業よりも中小企業に向いているとも言えます。

中小企業は資金も人材も限られた中で、いかに大切な従業員に「仕事と介護の両立」をしてもらうか、介護離職せず働き続け、活躍してもらうか?
知恵をしぼり、個別性を持って対応することで切り抜けていくしかありません。
今回は、中小企業でも取り組み可能な制度をいくつか紹介します。

(その1)介護休暇の時間単位取得制度
 日常的な介護では、施設への送迎や病院への付き添いなどが多くあります。
その際に1~2時間の介護休暇を取得できれば、仕事と介護の両立が可能となる場合があります。
育児介護休業法では、1年に5日までの介護休暇の取得が可能となっていて、1日または半日単位で取得することができます。
これを、御社独自の制度として、時間単位で取得できるようにするのです。
多少、労務管理が面倒になるとしても、それほど導入が難しいものではないでしょう。
介護休暇中の賃金は、元々、支払う必要はありません。
半日単位での取得制度を設けることは法で定められた義務ですから、それをあと少しアレンジして時間単位での取得を可能にしてください。

(その2)短日数勤務制度
 育児介護休業法では、家族を介護する従業員のために、次の4つのうちのどれか1つ以上の制度を設けなければなりません。
①所定労働時間の短縮制度
②フレックスタイム制度
③始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げ制度
④介護に係るサービス費用の助成

所定労働時間の短縮制度(時短制度)というのは、人によってはかなり有効な制度となります。
ただ、介護のために平日丸1日の休みが必要な人もいます。
また、短時間勤務制度によって早あがりする場合には、同じ部署の同僚に申し訳なく思ったり、仕事が中途半端になってしまうことに気が引けたりすることもあります。
そのような時に、平日丸1日休みを取って、残りの4日間は通常通り定時まで働く方が、本人も気が楽だし、部署全体の効率も上がる場合があります。

本人およびその人が働く部署の状況によって、短日数勤務制度の導入を検討してみてはどうでしょう。
「1日2時間短縮の5日勤務」と「週4日間のフルタイム勤務」、どちらが良いか比較検討する価値はあると思います。

(その3)相談ルートの複数設置
 初めに述べた通り、介護は個別性が大きいものです。
上司である管理職者が、すべての悩みに答えることは不可能です。
相談窓口を設け知識を備えた人材を育成・配置したり、外部機関に委託したりすることが必要になってきます。
また、介護に関するセミナーや講習を開催して、従業員に介護に関する知識を持ってもらい、どのような場合にどこに相談したらよいかを知っておいてもらうことも有効です。

社内に設ける相談窓口は、「仕事と介護の両立」についての相談を受け付けるものとすべきです。
社内制度を伝えたり、どのような制度があれば両立ができるかを相談する場とすべきです。
介護そのものに関する相談は、外部機関(地域包括支援センター、ケアマネジャー、市役所等)の相談先を伝えるようにすれば十分でしょう。
また、相談窓口で介護に関する情報等を取り扱う場合には、プライバシーへの十分な配慮を徹底しなければなりません。

一歩抜きん出た両立支援制度の先には…

今回お話した以外にも、御社に合った「仕事と介護の両立支援制度」を検討してみてはいかがでしょう。
これから中高年者の多くが直面するであろう「仕事と介護の両立」について、御社が一歩抜きん出ることで、御社の大切な人材を失わないで済むだけでなく、優秀な人材を集められる可能性も広がります。

パワハラは増加傾向


 ここ最近、パワハラの話題がよく報道に上りますね。パワハラについては、今のところ労働法上の明確な規定がなく、”愛ある叱咤激励なのか、単なるストレスの捌け口なのか”、”カラッとした冗談なのか、差別的ないじめや嫌がらせなのか”、境界線が難しい問題ですが、近年を被害を訴える労働者が増加していることは明らかで、防止対策の強化が求められています。
 厚生労働省も、パワハラの専用サイト(明るい職場応援団)を作成したり、検討会(職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会)を立ち上げるなどして、防止対策の更なる強化を模索しています。
 検討会での検討については、今後の動向に注目です。
〔確認〕厚生労働省のパワハラの専用サイト(明るい職場応援団)
http://www.no-pawahara.mhlw.go.jp/foundation/
※パワハラの裁判事例や他社の取組みなどを紹介。一般的なパワハラの定義などもご覧になれます。
〔確認〕直近の「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」の資料
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000165529.html
※「平成28年度版パワハラ実態調査(資料4)」などもご覧になれます。
 「パワーハラスメントの予防・解決のための効果が高い取組として、相談窓口の設置や従業員向けの研修の実施を挙げている企業の比率が高い」といった調査結果が出ています。

第193回国会が終了 働き方改革関連法案の提出は持ち越し


 第193回国会(常会)が、今月18日に終了しました。
 政治スキャンダルに多くの時間が割かれた感がありますが、今国会において、政府が新規提出した法案66本で、そのうち、天皇陛下の退位を可能にする特例法や、共謀罪の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法など63本が成立。成立率は95.5%だったとのことです。
 
 主な成立法案についてはこちら    全ての成立法案はこちら
 前国会からの継続法案は6本中3本が成立しましたが、残業代ゼロ法案などとも揶揄されている高度プロフェッショナル制度の導入などを盛り込んだ労働基準法改正案の成立は見送られました。
 時間外労働の上限規制と同一労働同一賃金の実現を柱とした働き方改革関連法案については、法案の作成が遅れ、今国会での提出はありませんでした。
 今秋の臨時国会には、法案が提出されることになると思われますが、継続審議となっている労働基準法改正案の動向も含め、今後も目が離せない状況です。
 なお、時間外労働の上限規制と同一労働同一賃金の法整備については、それぞれ、労働政策審議会での審議の結果が取りまとめられ、厚生労働大臣に対して建議が行われています。
 今後、厚生労働省は、この建議の内容を踏まえ、法案要綱を作成し、労働政策審議会に諮問する予定となっています。

 働き方実行計画についてはこちら
 確認までに、各々の建議の内容を紹介しておきます。
〔確認〕時間外労働の上限規制等について(建議)

〔確認〕同一労働同一賃金に関する法整備について(建議

2017年6月18日日曜日

法改正10(第193通常国会)

 第193通常国会で成立した主な法律は次の通り。
 ■内閣提出法
 天皇陛下の退位を実現する特例法=天皇陛下の一代限りの退位を認める
 匿名加工医療情報法=特定の個人を識別できないよう加工する医療情報の取り扱いを定める
 〈法務省
 改正民法=企業や消費者の契約ルールを約120年ぶりに抜本改正
 改正組織犯罪処罰法=犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の構成要件を改め「テロ等準備罪」を新設
 〈財務省
 改正所得税法=所得控除額38万円の対象となる配偶者の所得上限を103万円から150万円に上げ
 〈厚生労働省
 改正雇用保険法=雇用保険料率を3年間0.8%から0.6%へ下げ
 改正介護保険法=18年から一部の利用者の負担を2割から3割に上げ
 改正児童福祉法=児童虐待に家庭裁判所の関与を強化

2017年6月17日土曜日

法改正9(労働安全衛生法)

最近の法改正についてシリーズでお伝えします。
第9回として労働安全衛生法に関する法改正についてお知らせします。
最右欄のアルファベットは重要度ですので参考にしてください。

労働安全衛生法 法改正


産業医の選任規程の見直し
平成29年4月1日施行
事業経営の利益の帰属主体である法人の代表者が、当該法人の事業場の産業医を兼務することなどが禁止された。
事業者が行うべき調査等(化学物質管理の在り方の見直し)
平成28年6月1日施行
一定の危険性・有害性が確認されている化学物質(表示義務の対象物及び通知対象物)について、事業者に危険性又は有害性等の調査(リスクアセスメント)を義務付けることとされた。
その他
平成29年4月1日ほか
施行
1 本籍地の記載を求める省令様式等の改正
2 特殊健康診断の対象となる有害な業務の見直し
3 建設工事従事者の安全及び健康の確保の推進に関する法律の施行
が行われた。

法改正8(労働者災害補償保険法)

最近の法改正についてシリーズでお伝えします。
第8回として労働者災害補償保険法に関する法改正についてお知らせします。
最右欄のアルファベットは重要度ですので参考にしてください。

労働者災害補償保険法 法改正


通勤の定義(育児・介護休業法等の施行に伴う改正)
平成29年1月1日施行
逸脱又は中断の後の移動が通勤と認められる逸脱又は中断の行為(日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるもの)について、育児・介護休業法等の施行に伴う規定の整理が行われた。
介護補償給付の額に関する改正
平成29年4月1日施行
介護補償給付(介護給付)の限度額と保障額が改正された。
個人番号の利用による添付書類の省略など
平成29年4月1日施行
生計維持関係などを証明するための書類について、その証明しようとする事項が機構保存本人確認情報により確認できる場合は、その書類の添付を省略することができることとされた。

法改正7(労働保険徴収法)

最近の法改正についてシリーズでお伝えします。
第7回として労働保険徴収法に関する法改正についてお知らせします。
最右欄のアルファベットは重要度ですので参考にしてください。

労働保険徴収法 法改正


雇用保険率の改正
平成29年4月1日施行・
適用
雇用保険率を、3年間(平成29年度~31年度)、時限的に引き下げることとされた。
その法定の率に弾力的変更の規定(二事業に係る率に適用されるものを含む。)が適用され、前年度比較すると、各区分で1,000分の2の引き下げとなった(一般の事業については、1,000分の111,000分の9)。
特例による延滞金の割合
平成29月1日適用
14.6%」、「年7.3%」という延滞金の割合を、特例基準割合に応じて軽減する特例について、平成29年中の割合は、14.6%=「9.0%」、年7.3%=「2.7%」とされた。

法改正6(雇用保険法)

最近の法改正についてシリーズでお伝えします。
第6回として雇用保険法に関する法改正についてお知らせします。
最右欄のアルファベットは重要度ですので参考にしてください。

雇用保険法 法改正

65歳以上の者への適用拡大
平成29年1月1日施行
65歳以上の被保険者について、65歳前からの継続雇用の要件が削除され、その名称も、「高年齢継続被保険者」から「高年齢被保険者」に改められた(これに伴い、適用除外の規定も改正)。加えて、当該被保険者等を支給対象とする失業等給付の範囲が拡大された。
基本手当に関する改正
平成29年1月1日施行
平成29年4月1日施行
1 特定受給資格者の離職理由の一部を見直すこととされた。
2 倒産・解雇等により離職した3045歳未満の者(算定基礎期間1年以上5年未満)の所定給付日数を引き上げることとされた。
3 リーマンショック時に設けられた平成29年3月31日までの暫定措置を終了させる一方、①雇止めされた有期雇用労働者の所定給付日数を倒産・解雇等並みにする暫定措置を5年間実施する(実質的に延長)、②災害により離職した者の給付日数を原則60日(最大120日)延長できる規定を設ける、③雇用情勢が悪い地域に居住する者の給付日数を60日延長する暫定措置を5年間実施するなどといった対応をとることとされた。
基本手当と教育訓練給付金に関する改正
平成29年4月1日施行
基本手当の受給期間の延長の申出及び教育訓練給付金の適用対象期間の延長の申出について、その申出の期限が見直された。
就職促進給付に関する改正
平成29年1月1日施行
~C
1 再就職手当の給付額(給付率)を引き上げることとされた。これに伴い、就業促進定着手当の限度額も見直すこととされた。
2 移転費のうち着後手当について、給付額が拡充された。
3 「広域求職活動費」が拡充され、「求職活動支援費」に改められた。
教育訓練給付金に関する改正
平成29年1月1日施行
一般教育訓練に係る教育訓練給付金について、キャリアコンサルティングの費用も、給付額の計算の対象とすることとされた。
育児休業給付金に関する改正
平成29年1月1日施行
1 期間を定めて雇用さる者の休業の取得要件を緩和することとされた。
2 育児休業給付金の支給対象となる子(育児休業の対象となる子)に、特別養子縁組の監護期間中の子などを追加することとされた。




介護休業給付金に関する改正
平成29年1月1日施行
平成28年8月1日施行
1 期間を定めて雇用される者の休業の取得要件を緩和することとされた。(B)
2 被保険者の祖父母、兄弟姉妹、孫に設けられていた“同居、かつ、扶養”の要件が削除された。(A)
3 同一の対象家族の同一の要介護状態に対する介護休業給付金の支給回数の制限を緩和することとされた。(A)
4 休業開始時賃金日額の上限額が引き上げられた。また、当分の間、給付率が引き上げられることになった。(A)
国庫負担の割合の時限的引き下げ
平成29年4月1日施行
失業等給付に係る国庫負担の割合を、3年間(平成29年度~31年度)、時限的に引き下げることとされた。
雇用保険二事業
最終
平成29年4月1日施行
1 雇用保険二事業は、被保険者等の職業の安定を図るため、“労働生産性の向上”に資するものとなるよう留意しつつ行われるものであることが、法律に明記された。
2 助成金等の内容について、見直しが図られた。
10
自動変更対象額等
平成28年8月1日適用
自動変更対象額等が、毎月勤労統計の年度の平均給与額の変動の比率に応じて変更された。