2017年10月17日火曜日

「労働基準関係法令違反に係る公表事案」を更新 厚生労働省

 厚生労働省は、今月16日、「労働基準関係法令違反に係る公表事案」を更新しました。
 これは、労働基準関係法違反の疑いで書類送検された国内企業の企業名・所在地・事案の概要などを公表するもので、「ブラック企業リスト」とも呼ばれています。
 初公開は、今年5月末。以来、原則的に毎月更新されています。
 企業名などが公表される期間は原則1年間とされています。
 
 これまでに、違法な長時間労働で世間を騒がせた大手広告会社や大手旅行会社はもちろん、労働安全衛生法に違反した企業などが掲載されています。
 今回の更新では、宅配便最大手の運輸会社も追加されました(社員2名に、1か月間の時間外労働の割増賃金合計約15万円を支払わなかったため書類送検)。
 公開当初の公表企業は330社程度でしたが、この10月の更新で470社を超えたようです。
 公表された企業は、イメージダウンなどの社会的制裁を受けることになります。やはり、法令遵守の意識は重要ですね。
 労働時間関係のルールについては、少なくとも、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(平成29年1月20日策定)」を遵守する必要があります。
 
 詳しくは、こちらをご覧ください。
<労働基準関係法令違反に係る公表事案(10月16日更新)>
http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/dl/170510-01.pdf
〔確認〕労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドラインのリーフレット
http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/dl/151106-06.pdf

テレワーク・デイの効果は? 検証結果および報告会の資料を公表

 総務省は、関係府省・団体と連携し、2020年の東京オリンピックの開会式が予定されている7月24日を「テレワーク・デイ」と定め、計900団体以上、6万人超の参加を得て全国一斉のテレワークを実施しました。(今年が第1回目。開催まで毎年行うことになっています)

 
 「テレワーク・デイ」の政策目的の一つは、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の際に想定される交通混雑の緩和です。
 そのためには本年の「テレワーク・デイ」の効果を定量的に検証し、来年度以降の実施に活かすことが必要ということで、「テレワーク・デイ」当日の人口変動について分析が行われました。(今月13日、結果を公表)
 その概要は、次のとおりです。
●テレワーク・デイ当日の10時台に人口が減少した東京23区内の500mメッシュを比較すると、1位は豊洲、2位は浜松町、3位は品川となった。豊洲周辺(1.5kmメッシュ)の人口減は最大約4,900人(10%減)となり、特に40歳代男性の人口減が顕著。
●豊洲エリアでは8~19時に人口が約1~2割減。豊洲駅では7~9時・18~20時に最大約2割減となった一方、12時前後はやや増加。時差出勤の影響の可能性がある。
●鉄道各社調べによれば、ピーク時間帯(朝8時台)の利用者減少量は東京メトロ 豊洲駅で10%減、都営芝公園駅で5.1%減、都営三田駅で4.3%減(いずれも昨年の同日・同時間帯との比較)。
 なお、この分析は、携帯電話利用者の位置情報等のモバイルビッグデータを利用して行ったということです(携帯大手3社が協力)。
 詳しくは、こちらをご覧ください。
<モバイルビッグデータを活用した「テレワーク・デイ」の効果検証>
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu02_02000185.html
 また、今月6日に開催された『「働く、を変える日」テレワーク・デイの報告会』の資料も公表されました。(今月13日公表)
 この報告会では、総務省による実施結果報告のほか、テレワーク・デイ特別協力団体によるプレゼンテーション(各社の取組等)などが行われました。

 公表された資料には、テレワークを実施した団体のコメントが紹介されたものもあります。
 効果を認めるものほか、次のように、課題を掲げるものもあります。
●「テレワークになじむ業務とそうでない業務の整理が必要」、「テレビ会議を併用しないと職場とのコミュニケーションが難しい」
●「子供の夏休みと重なり、自宅では業務効率が落ちた(自宅以外の集中して業務ができる場所確保が必要)」
●「PCの設定に手間取り、必要な資料も手元に無く不便」、「適した業務と適さない業務があるので不公平感あり」
 
 テレワークの実際の運用においては、まず、適用する業務の整理が必要となりそうです。ルールの徹底や事前の準備(インフラ面の整備、社員への事前レクチャー、報告体制の取決めなど)も欠かせないでしょう。
 また、制度への理解を深めて、不公平感を生まないような職場環境を作り上げる必要もありそうです。
 詳しくは、こちらをご覧ください。
<「働く、を変える日」テレワーク・デイ報告会発表資料>
https://teleworkgekkan.org/news/20171013_5786

2017年10月13日金曜日

漫喫「マンボ-」に残業代支払い命令 残業月123時間

「首都圏を中心にインターネットカフェや漫画喫茶を展開する会社の元従業員の男性が時間外労働に対する割増賃金の支払いを求めた訴訟について、今月11日、東京地裁は、同社に1,000万円を超える金額の支払いを命じた。」という報道がありました。
 判決は、「入社面接時に給与のどの部分が固定の残業代か説明をせず、(原告である男性と)残業代に関する合意がない」と認定。退社時からさかのぼった2年間(時効で賃金の請求権が消滅するまでの期間)において、法定労働時間を上回る労働が毎月82~123時間に上ったと認め、この時間を積算した未払い残業代などの支払いを命じたとのことです。
最近、定額残業代に対する報道が多くなっていますが、そのメリット・デメリットについて考えてみたいと思います。

 残業時間を削減するには、変形労働時間制、みなし労働時間制などの特殊な労働時間制度を導入することがまずは有効と考えられますが、導入してもなかなか大幅な削減にはつながらなかったり、あるいは導入するには制度の整備などちょっとハードルが高いという企業もあります。その場合はとりあえず、毎月固定の定額残業代を設定して支給することが手っ取り早くて有効な対策であるとよく言われます。

 定額残業代については労働基準法上明確に言及されていません。法律の趣旨からいって、積極的に奨励するような制度ではないと思われますが、過去の判例などを参考にして違法とされない運用を心掛ける必要があります。

定額残業代が合法と認められるためには以下の要件を満たさなければなりません。
①残業代に相当する部分が、他の賃金と明確に区分されている
②何時間分の残業代に相当するのか定められている
③実際の残業時間で計算された残業代が定額残業代を超えた場合には、その差額が支払われている

 よく「残業代を毎月定額で払うようにすれば、後はどんなに残業してもそれ以上は払わなくていいんですよね。」と聞いてくる企業の方がいますが、実際の残業時間が定額残業代相当分を超えればその差額分は支払う必要があります。

 会社からみれば、残業が少ない月は定額なので働いていない分も余計に払い、さらに残業が定額相当部分を越えたら超えたで差額を支払うことになり、労基法遵守の観点からいえば、定額残業代制度は会社にとって本来メリットのある制度とはいえないのです。

多くの企業が残業代を毎月固定で支給する本当の狙いは

①いま現在支給している給与の中から残業代を捻出したい
(つまり従業員の認識しているであろう自身の基準内賃金を実質引き下げることを意味します)
②見せかけの月例給与の総支給額を多くしたい
③残業代の面倒な計算を省きたい。

①②は従業員にとって不利益な事項であり、やり方によっては従業員のモチベーションに大きなマイナス作用を及ぼしかねないということになります。

以上のような点をよく考えて固定残業制を導入すべきかどうかを検討してください。

2017年10月11日水曜日

名ばかり管理職 地裁が未払い残業代の支払いを命令

大手スポーツクラブ「コナミ」の支店の元店長の女性が、運営会社に残業代の未払い分など約650万円の支払いを求めた訴訟の判決が、今月6日、東京地裁であり、同社に約400万円の支払いが命じらました。
 女性は平成19年から支店長などとして勤務し、平成27年に退社。同社の就業規則では支店長は管理監督者とされ、月5万円の役職手当が支給される一方、残業代は支払われていなかったそうです。
 
 管理監督者に該当するか否かは、権限や裁量、待遇などから判断されますが、判決では、女性の勤務実態について、
①日常業務には本社の決裁が必要で、従業員と一緒にフロントなどシフト業務に入らざるを得なかった。
②支店運営の裁量が制限され、恒常的に時間外労働を余儀なくされていた。
③管理監督者の地位や職責にふさわしい待遇とは言いがたい
とし、女性の管理監督者性を否定。その上で、労働基準法に違反するとして、未払いの残業代と懲罰的付加金の支払いを命じました。
 いわゆる「名ばかり管理職」が問題となった訴訟ですが、厚生労働省の通達で示された要素などを勘案して判決が下された形になっています。

〔参考〕いわゆる「名ばかり管理職」については
下記の厚生労働省のパンフレットを参考にしてください。

2017年10月7日土曜日

マイナポータルのアプリケーションをリリース(内閣府)

 内閣府から、「マイナポータルを利用するためのアプリケーションソフトウェア『マイナポータルAP』を、平成29年10月7日にWindowsパソコン及びAndroidスマートフォン向けにリリースします。」というお知らせがありました。

 
この『マイナポータルAP』を用いることにより、
①子育てワンストップサービス(ぴったりサービス)における電子申請を行う際、電子署名の付与を行うことができるようになります。(11月7日から)
②『マイナポータルAP』をインストールすることにより、短時間で簡単に利用者環境の設定が行えるようになります。(11月23日から順次、利用者環境の改善を予定
但し、iPhoneについては対応時期未定となっています。
 詳しくは、こちらをご覧ください。

派遣先でもセクハラ・マタハラなどの対策を!

 厚生労働省から、今月5日、「ご存知ですか? 派遣先にも男女雇用機会均等法や育児・介護休業法が適用されます」というリーフレットが公表されました。

 
派遣先にも、次の5つの規定が適用されます
①妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止(均等法9条3項)
②育児休業等の申出・取得等を理由とする不利益取扱いの禁止
(育介法10条、16条ほか)
③セクシュアルハラスメント対策(均等法11条1項)
④妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策
(均等法11条の2第1項、育介法25条)
⑤妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置(均等法12条、13条第1項)
詳しくは、こちらをご覧ください。

過労死白書公表

  厚生労働省は、今月6日、政府が閣議決定した「平成29年版過労死等防止対策白書」を公表しました。「労働時間を正確に把握すること」が「残業時間の減少」に繋がると結論付けています。


ポイントが以下の通りです。
●過労死等が多く発生している自動車運転従事者や外食産業を重点業種とする分析
●企業における過労死等防止対策の推進に参考となる調査研究結果
●昨年度の取組を中心とした施策の状況
 ①「『過労死等ゼロ』緊急対策」
 (平成28年12月26日「長時間労働削減推進本部」決定)
 ②「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日「働き方改革実現会議」決定)
●過労死等防止対策に取り組む企業、民間団体、国、地方公共団体の活動をコラムとして紹介。(下記 味の素の事例参照)
 
詳しくは、こちらをご覧ください。

平成29年版過労死等防止対策白書

平成28年版過労死等防止対策白書

味の素(株)の取組み事例
1.コアタイムを廃止したスーパーフレックスタイム
2.時間単位有給休暇、在宅勤務制度などを導入
3.自身の労働時間等を計画、振り返りができるツールである「働き方計画表」を各職場に 導入
4.平成30(2018)年度に、従業員の年間平均 労働時間を1800時間に短縮することを労使の共通目標とする
5.平成29年4月から次の施策を実施
 ①1日の所定労働時間を従来の7時 間35分から20分短い7時間15分に
 ②パートタイム従業員(工場勤務)についても時給を5~6%引き上げ、所定労働時間を1日あたり20分短縮、
 ③毎月の基本給を底上げするベースアップ5,000円を含む月1万円の給与引き上げ
導入の成果
1.各社員が自己の労働時間を客観的に把握するようになる
2.「労働時間への感度」の高まり
3. 「年次有給休暇」の取得日数の増加