2016年11月25日金曜日

働く人にとっての倫理と法と就業規則

私たちが働く上で、私たちを縛るもの。
私たちが、守るべきもの、従うべきとされているものです。
その代表的なものが、次の3つではないでしょうか。

1.法令
2.職場のルール
3.倫理

では、これらの関係は一体どうなっているのでしょう?

1.法令
法令とは、法律と政令・省令・施行規則等
法令は、当然守らなければならないのでしょうか?

  (1)〇〇しなければならない(義務)
  (2)〇〇してはならない(禁止)
  (3)〇〇に配慮しなければならない(配慮義務)
  (4)〇〇するよう努めなければならない(努力義務)
  (5)単なる理念をうたったもの

守るべきものは、(1)、(2)です。
(3)~(5)までは、守ったほうが良いですが、絶対に守る必要まではありません。
守らなかったからといって、罰則などは科されません。

2.職場のルール
職場のルール = 就業規則
就業規則職場のルールブックであり、就業規則に載っているルールは守らなければならない。
逆に、就業規則に載っていないルールは、守るべきルールとは言えない。(守る必要はありません)※労基法89条の10
働く人の権利と義務を定めたものが、就業規則です。

就業規則に載っているルールは、働く人だけでなく、会社をも拘束します
会社も、就業規則に従わなければなりません。
ですから、もし就業規則の記載ミスで、就業時間を実際よりも短い時間で記載していた場合には、その就業規則に書かれた就業時間と実際の就業時間の差について、会社は賃金を支払う必要が出てきます。
記載ミスだからといって、支払いを免れることはできません。

また、就業規則に明記されていない事項でも、法令で定められている権利は、当然、認められます。
たとえば、男性の育児休業。
これは、育児・介護休業法で定められた労働者の権利です。
男女関係なく、取ることができます。
就業規則に不備があって、男性の育休の定めがなかったとしても、
就業規則に定めがないという理由でその申出を断ることはできません。
当然、男性であっても育休を取ることができますし、会社がそれを断れば、法違反となります。
この行為は、マタハラとなります。
都道府県労働局の雇用環境・均等部に申し出れば、指導等の対象となります。
※ 雇用環境・均等部では、セクハラ・パワハラ・マタハラ等の相談や企業指導、労働紛争のあっせんや調停を行っています。

職場のルールを破れば、当然罰せられます。
しかし、職場の罰則である懲戒処分を科すには、就業規則への定めが必要です。
就業規則に懲戒の定めがなければ、懲戒処分を科すことはできません。
また、就業規則に定めた理由でしか、懲戒処分を科すことはできません。
就業規則に定められていない理由では、従業員を処罰できません。

ただし、就業規則に定めがあれば、何でもO.K.というわけではありません。
懲戒処分には、「客観的で合理的な理由」と「社会的な相当性」が必要です。
たとえば、「社長と気が合わない従業員を、社長の独断でクビにする」という定めがあったとします。
このような定めには、客観性がありません。(社長の主観)
また、合理的であるとも言えません。
ですから、この定めは「無効」となります。

あるいは、1回だけ10分程度遅刻しただけで、懲戒解雇などというのも、いくらなんでも厳しすぎっしょ!
社会的な相当性がありませんから、これも「無効」となるでしょう。

ちなみに、裁判等で懲戒解雇が「無効」と判断された場合、解雇されてから無効が確定するまでの期間の給料を受け取ることができます。(働いていないにも関わらず・・・)

会社側は、その間の給料を支払わなければなりません。
おまけに、裁判費用もかかっています。
裁判のための証拠集めや書類作成、弁護士との打ち合わせ等に関わる従業員の人件費もかかりますし、その従業員の機会損失費用も出ます。
ですから、費用の面からいっても、会社は安易な解雇を行うべきではありません。
※ 機会損失費用とは、その従業員が裁判に関わることがなければ、当然に生み出していたであろう売上や利益

3.倫理とは?
職場での倫理はルールではありません。
ということは、従わなければならないものではありません。
従わなかったからといって罰せられるものではありません。
ルールであれば、就業規則に明記されなければならない。
※労基法89条の10

では、働く人にとっての倫理とはなんでしょう?
職場において倫理的に問題となる行為とは、「罰せられることはないが、バッシングや誹謗中傷、陰口などを叩かれて嫌われるような行為。また、周囲を不愉快にする行為。」
※ あまりに倫理的に問題のある行為については、公序良俗に反する行為として、罰則の対象になることがあります。

ですから、バッシング等が気にならなければ、倫理など気にする必要はないかもしれません。
しかし、倫理的な行動をとれば、人間関係が円滑になるというメリットがあります。

ただ、倫理とは、「仲間内だけに通用するローカルルール」であり、その場・その時の「なんとなくの共通認識」であったりもします。
ですから、他者(第三者)からみた場合に、とても非常識で滑稽なものであることもあります。
「ひとつの倫理」は「もうひとつの倫理」と対立する!という言葉があるくらいです。
あまり倫理に囚われ過ぎないことが大切です。
倫理観も、行き過ぎればハラスメントやいじめの原因となります。
自分の倫理観を「絶対的なものだ」という勘違いから起こる、悲しい結末です。


職場において守るべきは、第1に就業規則です。
あまり「倫理」に重きをおくと、それが逆に「倫理的でない」ということにもなりかねません。


では、実際にはどのようにこの問題を解決すれば良いのか?
まず、今まで「職場での倫理」として扱っていた事項について、会社が従業員に「やって欲しいこと」「やってもらいたくはないこと」として、就業規則に具体的に明文化します。
その時に、懲戒規定とヒモづけることが必要です。
さらに、人事評価制度の評価基準ともヒモづけましょう
「やって欲しいこと」を行うような従業員の評価は高く、「やってもらいたくないこと」を行う従業員は低く評価されるような評価基準を設けましょう。
「〇〇な人物」「〇〇な能力」「〇〇な行動」を、どのように評価するのか、その評価基準と倫理とをヒモづけるのです。
このことによって、曖昧だった「組織の目指すべき方向性」や「価値観」を、従業員皆ですり合わせることができます。
従業員それぞれの判断の拠り所とすることができます。

このとき注意することは、懲戒規定や評価基準を具体的でわかりやすいものにすること
曖昧だと、評価者によって評価に違いが出たり従業員が何を行えばよいのか分からず迷走することにもなります。

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